2017/10/19, Thu.

夕刻に至れば、服を整えて室内にいても首元がやや頼りなく、マフラーを巻きたくなるような空気の冷たさだった。玄関をくぐって脇の傘立てにあった一本を掴むと、これも柄が随分と冷えており、それをひらいて進む雨道にすれ違う中学生らの顔も既に小暗く沈ん…

2017/10/16, Mon.

朝から衰えずに降り続けて盛んな雨の夕方を行けば、南の遠くの樹々も山も褪せた青さに霞まされて、地から天までまとめて水没したかのような暮れの景色である。上着の下にベストも着込んだ装いだったが、時折り傘を持ち上げながら吹く風の、明確な寒さで服を…

2017/10/12, Thu.

午前中には晴れた空が広がっており、寝床から見上げた窓の端にも白く収束する太陽の姿が見えたが、午後に入るとじきに曇って、厚くて固い布を掛けられたかのように一面曖昧な白に塞がった。暮れ方になって道を行くと、近間の八百屋が行商に来ている三つ辻で…

2017/10/11, Wed.

窓の先が鈍く沈んでいるのに気づいて洗濯物を取りこんでから、雨もよいの深まって行き、午後も遅くなると見通し悪く空気は霞んで降っているとも否ともつかず、雨粒の直線的に落ちるかわりに大気中に分散して染みこんだような風合いだった。四時を回って出発…

2017/10/10, Tue.

部屋で読書をしているあいだに背後の窓から暖気の寄ってくる晴れの日、外では風がぶつかりあっては先端で擦れるさまを思わせるようなアオマツムシの鳴き声が、間を置きながら上がり続ける。しばらくののちベランダに出ると、柵に干されたタオルの面[おもて]…

2017/10/9, Mon.

間道をしばらく通り、表へと出て街道を進むそのあいだにも、歩道の上に細く薄青く伸びた自分の影の、懐かしいような穏和な明るさに包まれて、歩くほどに長く引かれていくような斜陽の四時である。表道から一つ折れて正面のアパートの、低く並んだ垣根の葉に…

2017/10/5, Thu.

昼時、ベランダに続く窓がひらかれると、外から光の差し入って床に細長い矩形が見られ、四時過ぎになっても明るさは続き、淡い黄金色の光が窓外の緑に重ねられていた。前日の反復じみた風景だが、この日は空はそうは曇らず、覗いた水色の穏やかに、薄明るん…

2017/10/4, Wed.

四時頃になってアイロン掛けをしながら見やった窓の外で、樹々や山が薄陽を掛けられて少々色を変えている。一方で空が青灰色に沈んでいるのは、ありがちで馴染みの比喩ではあるが、広げられた毛布のような雲がいくらかうねりを形作りつつ遥か先まで覆ってい…

2017/10/3, Tue.

室内にいるあいだから肌に汗の浮かぶ陽気で、家を発った三時半にも露わな陽射しが背を温めた。空には爽やかなような青さも覗くが、街道で見上げた雲は乾いておらず、輪郭も固まらずに灰色混じりで水っぽく、積もってしばらく通行人に踏み崩されて、土を含み…

2017/10/2, Mon.

坂を上りはじめたところで視界のひらいた南を向くと、曇天を背景に黒点と化した鳥の一団の、鳥というよりはむしろ羽虫のように、遠くで小さくぱらぱらと飛んでいるのを見つけたが、空から山の手前に移るとそれらの姿の途端に目に映らなくなった。川を越えた…

2017/9/30, Sat.

木の間に跳ねる鵯の声を耳に坂を上って行き、着いた駅のホームから見上げた空は一面が薄白く、つい先ほど、坂下の道であるかなしかに洩れていた陽射しもいまはもうない。線路を挟んで向かいの道に連れられた犬の、縮れた毛のふさふさとして可愛らしいような…

2017/9/29, Fri.

三時過ぎの明るい道に赤蜻蛉が舞って、斜面の下からそびえ立つ樹の、道と同じ高さの宙に掛かって臥所のような葉叢の上に、ふっと降りて停まったのに足が止まって、ガードレールのこちら側から見つめていた。弱い風に枝葉がちょっと揺れるくらいでは蜻蛉はま…

2017/9/28, Thu.

前夜は一一時頃、風呂に浸かっているあいだに雨が始まり窓に響きが寄せてきて、深夜に掛けて弱まりながらも、虫の音と競うようにして断続的に降っていたらしい。この日も日中いくらか降ったが、暮れ方に出た道の湿りはさほどでなかった。坂を上って行くと木…

2017/9/27, Wed.

坂道の脇の草の間に紅色を差しこむ花々も、彼岸が明けて大方は色褪せ、細い先端をだらりと垂らして天を指さずに萎んでいる。空は一面平らかに曇って、しかし太陽が、西空を見ても白さのなかにその気配すら窺えないが、暖気をいくらか通してくるのか、少々蒸…

2017/9/26, Tue.

道にまだ日なたの明るく敷かれている三時半、坂への入り際に、西空から降りかかる露わな陽射しに背中が暑い。上って行きながら温んだ空気に、シャツのボタンを一番上の首元まできっちり留めていることもあってか、息苦しいような感じがちょっとあった。街道…

2017/9/25, Mon.

玄関を出ると正面の林に、ツクツクホウシが辛うじて残って、ただ一匹で鳴いているのが耳に入った。ポストから夕刊を取っておいて出発すると、家の近間の道にも坂にも陽はもう射しこまないが、空気がかすかに黄色いような暮れ方の風情である。街道まで行って…

2017/9/22, Fri.

昼下がりには降っていた雨が、午後も深まって道に出た頃には止んでいた。仄白く濁りの混ざって、雨の通ったあとで冷たい空気に、この秋初めてベストを羽織りネクタイも締めたが、捲ったシャツの袖口が肌寒くて頼りないようだった。坂道の脇を縁取る緑の斜面…

2017/9/21, Thu.

茶を用意しながら居間の南窓を見通すと、眩しさの沁みこんだ昼前の大気に瓦屋根が白く彩られ、遠くの梢が風に騒いで光を散らすなか、赤い蜻蛉の点となって飛び回っているのが見て取られる明るさである。夕べを迎えて道に出た頃にはしかし、秋晴れは雲に乱さ…

2017/9/20, Wed.

深夜、読書中。窓も閉ざした静寂のなかにカネタタキの声が突然、定かに立って闖入してきて、目を覚まされたようになる。

2017/9/19, Tue.

室内に暑気の漂う晴天が続き、この日も三〇度まで上がると聞く。モニターに向かい合って日記のためにメモを取っていると、背後の窓の先から、ツクツクホウシか、ちりちりと低く燻る蟬の声が立って、もうそんな力もないものか、高まらず鳴きに繋がらないまま…

2017/9/18, Mon.

前夜の遅くには吹き降りになって家がごとごとと鳴らされてもいたが、明けて台風一過、夏がいくらか戻ったように、居間の空気に熱が漂う晴れの昼だった。家の傍の道では数日前から人足が出張って、林から伸び出した枝葉が電線に及ばないようにというのだろう…

2017/9/17, Sun.

立川、六時。暮れの青さに浸った空から雨が降り続く。高架の通路から見下ろす道路に連なった車列の、テールランプの無数の赤。ビルの合間や路上に浮遊する光が雨と混ざって、宙空が靄っている。 * 夜、最寄り駅、薄雨。電灯の暈のなかで細かな粒が風に流さ…

2017/9/15, Fri.

風はあまり吹かなかったらしく、その質感の覚えはない。しかし、樹に囲まれた上り坂を抜けると、気温が一昨日昨日よりも一段下がったらしいと、肌に感じる涼しさの確かな夕べの道だった。空気の蒸す感触もなく、街道に出て仰いだ空の、西まで雲が張って僅か…

2017/9/14, Thu.

普段よりも遅い七時前の出になり、涼しげな空気のなか、坂に入ると既にアオマツムシが木立の方から鳴きしきっている。いつもと違う宵の口の往路に、気分も少々異なって、周囲の暗がりに迫られた視界が狭いようで何とはなしに、現実感が稀薄なようだった。 男…

2017/9/13, Wed.

彼岸花のひらきはじめた時季である。暮れも近い五時から出かけると、林の横を通るあいだに次々と落ちるものがあり、見れば足もとには若緑色の団栗が葉をつけたままでたくさん散らばって、踏み砕かれた実の粉で道に薄茶色が差している。蒸し暑い日で、外に出…

2017/9/12, Tue.

蟬の声のもうない坂に、替わりに鵯が盛んに鳴きを降らしている。木下坂を出てからも道端で別の一匹の張り上げるその声が、蟬があたりを占める前、春に聞いたものの記憶よりも、乾いたような、掠れたような風に聞こえた。 裏路地を行っているあいだに雨が落ち…

2017/9/11, Mon.

陽のある床で覚めてしばらく、窓辺に留まっていると、ミンミンゼミの生き残りが一匹、遠くからかすかな声を伝えてきた。食事中、外の林に風の音が起こる。風呂場で身を屈めながら浴槽を擦っている最中にも、飛行機が来たかと一瞬錯誤するほどの唸りが耳を通…

2017/9/8, Fri.

端々に陽の色が覗きながら空には雲も多くて、晴れと曇りの移り変わりの素早い昼だったようだ。雨を思わせるほどに薄暗む時もあったが、午後も深くなって出た頃には晴れ間がひらいてその気配も失われていた。風が、吹くと言うほどではないが途切れずよく流れ…

2017/9/7, Thu.

昼日中から薄灰色に沈みきって既に日暮れのような雨もよいに、室内もよほど暗んで、コンピューターのモニターが目に悪いほどになる。窓の内からは降っているともいないとも定かにはつかず、音もなく、ただ霧っぽい白さが湧いているのを見ていたが、夕刻を迎…

2017/9/5, Tue.

昼、鈴虫が、窓の外に鳴いている。気温がやや高戻った日で、蟬もいくらか合わせて鳴いて、夏の虫と秋の虫の声が両方入り交じる。季節がちょうど、跨ぎ越されている頃合いらしい。昼過ぎにベランダに出ても、曇天を透かして暖気が漂っており、その後、室内に…