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2017/3/24, Fri.

往路。一度春の空気の軽さを味わってしまったために身の回りを包むコートの厚みが野暮ったく思えて、ジャケットとストールのみで出たのだが、この夕方はそれほど春めいたものではなくて、風が冷え冷えといくらか肌寒い気候だった。空は隈なく白く詰まって、…

2017/3/22, Wed.

往路、雨降りの一日を挟んでふたたび気温の上がったこの日も、コートを纏わずに出た。いかにも春めいた二日前ほどの暖かさではなく、風がよく吹いて木々を鳴らすなかを歩いて行くと、頬が少々冷えるようだったが、陽射しがそれを中和してくれた。太陽は高く…

2017/3/21, Tue.

往路、朝から降っている雨が、弱まらず強まらず単調な勤勉さでまだ続いている。坂を上れば傘で狭まった視界のなかの、足もとに自ずと視線が落ちて、空を包む索漠としたような白さをアスファルトが吸って、歩みに応じて途上に広がっていくのが映る。空気はや…

2017/3/20, Mon.

往路、春分らしく、コートの必要ない暖かな夕べである。空気が動かなければ肌に触れているのもわからないほど馴染みの良い春気で、風が来ても快く涼しいばかりの軽さだった。空は雲が形なすのではなく液体のようにして全体に溶けて希薄に白いその裏に、水色…

2017/3/19, Sun.

九時前から散歩へ出た。外気に触れずに一日を終えるのが勿体なく思われたのだ。夜気はまだ、顔にややひやりとするようだった。町の下部から昇ってくる川音が、坂に入って右手に並ぶ木々の前を過ぎるあいだ、その一本ごとに確かに遮られて一時遠のくのがわか…

2017/3/18, Sat.

往路、飲み会のための外出で、時刻は既に七時半、宵も満ちて行き交う車はヘッドライトを、上下に激しく、四角いように拡大して、その上からさらにこちらの瞳に線を伸ばしてくる。裏に入ると、ちょうど夕食に向かう頃合いで、外出先から帰って来る車といくつ…

2017/3/17, Fri.

往路、まだコートを纏わなくては肌寒いような曇りの夕刻で、坂を上って行けば風が渡って周囲の木々がざわめくのに、目が細まる。道の軽く湾曲するあたりの、左手から張り出した斜面に生えた低木をちょっと見上げた瞬間、空を背後に黒く塗られた枝のなかから…

2017/3/15, Wed.

往路、玄関を出た途端に、空気の冷たさが身に触れる。引き続く曇り日の、前日と同じ三時半だが、一日前よりもはっきりと陽が洩れて、路上に影が浮かび上がった。街道に向かっていると、背中は薄陽が乗って仄かに温もるが、正面からは風が来て、身体の前面と…

2017/3/14, Tue.

往路の空気はぬるめで、道に湿りが残っていたが、西の、白さの薄くなった箇所に陽がかすかに溜まって、曇って平坦な空気の調子もほどけはじめていた。街道前の角でガードレールの内に生えた紅梅は、少し前には衣のように隈なく身につけていた花をだいぶ散ら…

2017/3/13, Mon.

二時過ぎに外出。空の曖昧にぼやけた曇り日だが空気は明るめで、風が顔に触れても、寒さに結実する数歩前に留まっている――と思いながらしかし、街道に出て正面からひっきりなしに流れる東風に、顔や胸のあたりに持続的に当たられていると、やはり冷え冷えと…

2017/3/12, Sun.

四時前に家の前の掃き掃除に出た。絶えず動いてやまない外気のなかに身を置けば、それだけで、屋内の停滞にこごった気分がふっと改まるような感じがする。道先には傾いた陽の手が淡く伸びて路上に触れており、こちらの玄関先は北側で、陽の手はここまで入っ…

2017/3/11, Sat.

昼前、ものを食いながら南の窓外を見やると、乾いた陽の色が粉っぽく舞って、風が吹いているようで家並みのあいだを走る電線が、上下に軽く撓むその上を応じて影が左右に行き来する。緑のなかに煌めくものがあるのに視線が奥に進んで、一体何が光っているの…

2017/3/10, Fri.

新聞の予報では一三度まで上がるとか言って、確かに室内にいても空気に多少のほぐれが触れられなくもないが、底にはまだ冬気の混ざって足先の冷える日である。夕刻五時の往路の大気も顔に少々固めだった。午前は綺麗に晴れたがその後雲が出て、いまも東の途…

2017/3/9, Thu.

往路。なかなかに冷たい空気の、この日も続いた夕刻である。街道前で道が表と裏に分かれる箇所の紅梅の木は、散りはじめているようで、一瞥して僅かではあるが、これまでよりも色が淡く、枝を囲む嵩が減っているのがわかった。昼には薄雲が湧いて窓の外の陽…

2017/3/8, Wed.

味噌汁のために白菜とモヤシを鍋で茹でているあいだに、夕刊を取りに玄関を出た。午後六時過ぎである。ポストに寄るとそこから見上げた空は青さが露わで、しかし曇りも僅かあるらしく、なかに左下の欠けた朧月が東寄りに掛かっている。新聞を持って振り返る…

2017/3/7, Tue.

外出、三時半頃である。往路、家を出た途端に、冴え返った空気の辛さが頬に染みる。雨は消えて、雲はまだ多いが、南の方から陽が浮遊してきて雨跡のまだ残る路上に薄く宿っていた。青から黒さの抜けきっていない空と林の、暗めの色調の背景を横切って、ちょ…

2017/3/6, Mon.

往路、曇天。雨の気配がなくもないので、傘を持った。気温はそれほど低くはない――出る前に風呂に入ったためだろう、肌の温もりが服の内に籠もり留まって柔らかく、露出した顔や傘を持つ手に触れる冷気も表面を撫でるばかりで、芯には侵入してこない。空気が…

2017/3/4, Sat.

米を研ぐ手に上から当たる流水にそれほどの冷たさが含まれておらず、長時間晒されていても、多少ひりつきはするものの、内の骨にまで食いこんで軋ませるようなあの麻痺が始まらないのに越しつつある冬の過ぎ行きが現れている。

2017/3/3, Fri.

ベランダに出ると、空気が緩く、肌に触れる陽射しの柔らかさにも春の感が立つが、洗濯物を取りこむあいだに風が動くと温もりが涼しさへと転じ、さらに吹けばやはりまだ冷たさが残る。畑を囲む斜面に低く生えた梅桃[ユスラウメ]の、手指をやや湾曲させながら…

2017/3/2, Thu.

往路、雨降りの日である。肩口は上着に守られて温もるが、外気の摩擦が鼻先に強く、冷たい。街道との交差点の脇の、ガードレール沿いに生えた紅梅は、枝を端から端まで膨らんだ花に装われて堂々と、揺らがずに静まっていた。表通りに出ると、風の動きが活発…

2017/2/28, Tue.

往路。空は坂に沿って並ぶ木々の毛細血管めいた枝振りをその上に黒く刻印されながら、軽い水色に広々とひらき、低みではそのまま和紙の淡紫に移行している、晴れた晩冬らしい夕刻である。コートの下の身体の方には冷気がさして伝わって来ないが、真正面から…

2017/2/26, Sun.

図書館に行って、『失われた時を求めて』の最終巻を借りて来ることにした。一時四〇分頃に出発した。正面から風が渡って来て、顔を包みこむ感触が、前日と比べてやや冷たかった。空には雲が多く、陽が射す時間もないではなかったが、長くはない。とは言え、…

2017/2/25, Sat. 

外出したのは午後七時を過ぎた頃である。既に暮れきって空は薄黒く、雲が染みのように湧いて、合間に覗く星の光もそれほど明瞭ではなかった。坂を行くあいだ、斜面の下のほう、川の近くのどこかの木で鳴いているのか、鳥というよりは虫の声のような短い囀り…

2017/2/24, Fri.

五時頃に散歩に出た。川へ行くことは決まっていた――一年か二年か、随分と久しぶりのことである。もう少し早い時間には陽も出ており、本来ならその頃合いに明るい川辺を気分良く歩きたかったところだが、諸々の事柄に時間を浪費してしまったあとで、いまは曇…

2017/2/23, Thu.

往路、コートを着ずにジャケットのみで出たが、問題のない陽気だった。坂を行くと林から、鼻に掛かったような音色で高低の二音を行き来し、嘲弄的な笑い声を思わせる鳥の鳴きが降ってくる――あるいは、ゴムを擦り合わせたような摩擦の感触も響きのなかに強い…

2017/2/22, Wed.

往路、空気の質は前日よりもやや和らいだ感じがした。この日は、期限の過ぎた本を図書館に返しに行かなければならなかったので、徒歩ではなく、最寄りから電車に乗ることにして、玄関を出ると普段と反対方向に踏み出した。空には大きな雲が寝そべって空間を…

2017/2/21, Tue.

往路、玄関を抜けて外気のなかに出た瞬間に、頬に触れる空気に擦過の感触が強いのが窺われる。春一番も吹き、花粉も飛びはじめて比較的温和な日が続いたなかで、久しぶりに冬らしく冴え返った日で、露出した顔のみならずスラックスの裏の脚まで冷たさが伝わ…

2017/2/20, Mon.

家の前の掃き掃除を少ししてから、散歩に出た。午後四時前である。その頃には雨が降っており、粒と粒のあいだはひらき気味で、隙間のある降りだったが、その代わりに一粒がそれなりに大きく密度を持っていて、黒傘の表面がぱちぱちと鳴った。西に向かって歩…

2017/2/19, Sun.

正午前に外出した。路上があまりに明るく、アスファルトにしろ道沿いの木々にしろ、地に伏して崩れかけた落葉にしろ、見るものすべてが光を含んで、大気そのものが輝かしく白っぽくなっているような日だった。そのような快晴ではあるが、鼻筋に触れる空気に…

2017/2/18, Sat.

イザベラ・バード『日本奥地紀行』を返却し、『失われた時を求めて』の続刊を借りるために、図書館へと出かけた。ピントのぼやけたような白曇りの空である。坂の出口あたりでは鳥が何匹も飛び交わし、宙に軌跡の印された裸木に渡ってシルエットと化すと、貧…

2017/2/17, Fri.

イザベラ・バード『日本奥地紀行』の書抜きを始めてまもなく、背後の窓の外から風の流れる音が膨らみ耳に入って、振り向いた。素早い鳥の飛行にも似て、木の葉の横一閃にいくつも切り過ぎて行く窓を眺めているうちに風はみるみる強くなって、竜巻めいて砂埃…

2017/2/16, Thu.

往路、鼻先を擦る空気の感触からすると、気温は高めらしく、そのためか知れないが、坂を上って行くあいだ、周囲から鳥の囀りが降り続けていた。身にほとんど冷たさが触れないのに、春の近づきが思われて、肌に摩擦をもたらさず体温に溶けこむあの軽い空気の…

2017/2/15, Wed.

ベランダへ続く戸口をひらいて境に立つと、肌に乗る陽射しに「照り」の感触があって、春めいている。しかし外に出て、流れる大気のなかに入ると、やはりまだ幾許かの冷たさが身に触れて、陽光の春色が中和される。洗濯物を取りこんだあと、しばらく柵の際に…

2017/2/14, Tue.

往路。坂を上って行くと、空中に刻まれた裸木の枝の縦横の広がりを透かして、市街の方の空に雲が染みるように浮かんでいるのが見える。白褪せたような後ろの空よりも夕刻の水色に濃く、液体じみた感触でありながら輪郭線もくっきりと、段の違いが見て取れる…

2017/2/13, Mon.

散歩に出た。時刻は午後五時半である。外に出ると、煙の匂いが薄く香った。先ほど部屋で着替えながら窓のほうを向いた時には、曇り空があるかなしかの薔薇色をはらんで、さながらコーヒーのなかに注ぎこまれて膜を広げるミルクといった趣に和らいでいたが、…

2017/2/12, Sun.

家を発って道に出て、視界に広がるまばゆさと、肌を包む冷えた空気の感触とを感じるやいなや、満足感を覚え、要するにこれだけで良いのだなと思った。わざわざ街へ出る必要などなく、ただそのあたりを歩けば良いのだろうが、今更引き返して荷物を置き、改め…

2017/2/11, Sat.

風呂に浸かりながら、知覚の拾うものに順々に焦点を絞って行く。浴槽は柔らかな感じのする白なのだが、照明の作用か、何かほかの要素との兼ね合いか、自らの身体が包まれている水は、淡い青緑色――翡翠色と言うべきか、あるいはビリジアンを水で最大限溶かし…

2017/2/10, Fri.

前日の雪は地上には積もることはなかったが、朝食中に山を見やると、木の伐られた斜面には白さがまぶされて残っていた。 * 往路。家を出てすぐ、数歩しか歩かないうちに、正面から流れてきて頬に当たる空気の質が、実に冷たいことを感じ取った。ことによる…

2017/2/9, Thu.

久しぶりに冷えこんだ日で、覚めて寝床を抜ける時から気温の低さが窺われ、午後からは雪も降った。寝床に転がっていた姿勢を起こして窓を目に入れると、白いものが舞い散っていたので少々驚いたものだ。とは言え、白さと粒の立ちはそれほど強くなく、雨に近…

2017/2/8, Wed.

青空のなかに雲多し――地に積もったのがしばらく経ち、溶けかけて水っぽくなるとともに、砂土が混ざって色を灰に濁らせた雪氷のようである。風はそれなりに冷たく、顔の前に幕のようにはだかるが、気温はそれなりに高いようで、空中に細かな虫が湧いて、何度…

2017/2/7, Tue.

往路、濡れたような薄暗い夕刻。下部の欠けて岩石めいた薄白い月が、凪いだ夕青の空に浮いており、頬紅のような暈も殊更に広がらずうっすらとその周囲を彩っている。空気はよく動いて、風が耳元でばたばたと音を立てる。 * 帰路、裏通りの空気は相変わらず…

2017/2/6, Mon.

朝には陽射しが寝床に入って来ていたが、家を発った一一時台には薄暗いほどの曇りになっており、玄関を抜けた時から雨の気配も嗅ぎ取られ、懸念された――実際、一〇分ほどしてから、往路を行っているあいだに散るものが始まったのだが、ひどく微かで、服の上…

2017/2/4, Sat.

料理の途中、洗い物をしていた時だったと思うが、玄関の方から父親が母親のことを呼んだ。呼んでいると、その声を仲介して、居間の卓に就いていた母親に知らせてやると、続けて父親は、ごみ袋はあるかとか何とか訊いて、出ていった母親と話していたのだが、…

2017/2/2, Thu.

母親と墓参りへ。玄関を出ると、身を取り囲んで肌に触れる空気に幾許かの冷たさがある。大気のその「辛さ」が、淡青の空の澄明さを対比的に強める感じのする、輝かしいような日である。 * 駅で叔母を拾って寺へ。我が家の墓所の前まで来ると、こちらは毛先…

2017/2/1, Wed.

朝食中、窓外の、川向こうの集落から弱やかな煙が湧き、漂っている。薄青いそれがなくとも、光の膜に籠められた山の姿は、それ自体でやはり青く煙ったようになっている――と思いながら、いつだったかまだそれほど経っていないはずだが、前の日記にも同じこと…

2017/1/31, Tue.

ベランダに出ると、大層風が吹いて大気をかき回したらしく、竿に吊るされているはずのシャツやらタオルやらがぐしゃぐしゃに乱れていくつも地に落ちていた。それを拾って再度吊るし、ほかのものから取りこんでいるあいだに、また強風が素早く抜けて、いま吊…

2017/1/30, Mon.

発ったのは四時頃だった。玄関を出ると、すぐ傍らの家壁が妙に明るいように、クリーム色に艶が出ているように一瞬映ったのは、我が家は北向きで正面は蔭を帯びているから目の錯覚のようでもあったが、実際、ひどく明るくまた、暖かい日だった――予報では、最…

2017/1/27, Fri.

往路、大層春めいて清朗な日だった。風に固さ冷たさはなく、肌の上をさらさらと流れて行くばかりで、心身がほぐれるような穏和さである。歩調も柔らかになり、身体の力が抜けるようで、裏通りを行きながら頭上を見上げると、丸いような青のひらいたなかに小…

2017/1/26, Thu.

往路、日向のなかを歩きはじめてすぐに、道の傍らから葉に触れる乾いた音が立って、それは林に接した石壁の上の縁、枝から落ちた葉が溜まっているところで鳥が戯れているのだ。近づくと枝に移った姿を見れば、随分と長い尾羽を上下に、柔らかく、鳥というよ…

2017/1/25, Wed.

洗濯物を取りこもうとベランダに続くガラス戸の前に立つと、部屋の内にいる時点で既に光線が抜けてきて目に眩しく、また大層温かい。戸をひらいて境の付近に留まりながら、吊るされたものを引き寄せているあいだも温もりは同じだが、外に踏みだしてひらいた…