2016-11-11から1日間の記事一覧

2016/11/7, Mon.

左の民家の向こうに併走している線路の脇には、芒が群生して、やや茶色混ざりの濁ったような白の花穂が、動物の尻尾めいて弱い風にゆらゆら振れながら、空間の只中に摩擦を仕込んでいる。そのさらに向こうに伸び立って林を作っている木々の仲間たちの、いく…

2016/11/4, Fri.

卵とハムを焼いておかずにし、卓に就いて新聞を読みながら食べた。南窓はひらいて明るさが入りこんでおり、ページをめくればその際に、窓辺の水晶玉の弾く虹色の斑点が平板な色の紙の上にも、一点灯って逃げる午前である。食器を洗い、風呂洗いも済ませたの…

2016/11/2, Wed.

最後の乗り換えを待つ必要があったので、ベンチに腰掛けて読書を続けた。周りは風の音も立たず虫の音もなく静かで、空気が動けば冷たい感触が、ページを押さえる手の表面に宿るが、その大気の揺動は、電灯の下に佇む木の葉を揺らすほどの強さもない。その木…

2016/11/1, Tue.

行きと同じく肌寒い夜道だが、冷気は肌の表面を覆うのみで、その先の皮膚の奥にまで突きこんで来る力はない。気温も落ちて虫も消えたかと、革靴の足音の反響するなかを行っていると、その固い音の裏に隠れるようにして、遠くから虫の、しかしいっとき豊かに…