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2017/2/23, Thu.

往路、コートを着ずにジャケットのみで出たが、問題のない陽気だった。坂を行くと林から、鼻に掛かったような音色で高低の二音を行き来し、嘲弄的な笑い声を思わせる鳥の鳴きが降ってくる――あるいは、ゴムを擦り合わせたような摩擦の感触も響きのなかに強い…

2017/2/22, Wed.

往路、空気の質は前日よりもやや和らいだ感じがした。この日は、期限の過ぎた本を図書館に返しに行かなければならなかったので、徒歩ではなく、最寄りから電車に乗ることにして、玄関を出ると普段と反対方向に踏み出した。空には大きな雲が寝そべって空間を…

2017/2/21, Tue.

往路、玄関を抜けて外気のなかに出た瞬間に、頬に触れる空気に擦過の感触が強いのが窺われる。春一番も吹き、花粉も飛びはじめて比較的温和な日が続いたなかで、久しぶりに冬らしく冴え返った日で、露出した顔のみならずスラックスの裏の脚まで冷たさが伝わ…

2017/2/20, Mon.

家の前の掃き掃除を少ししてから、散歩に出た。午後四時前である。その頃には雨が降っており、粒と粒のあいだはひらき気味で、隙間のある降りだったが、その代わりに一粒がそれなりに大きく密度を持っていて、黒傘の表面がぱちぱちと鳴った。西に向かって歩…

2017/2/19, Sun.

正午前に外出した。路上があまりに明るく、アスファルトにしろ道沿いの木々にしろ、地に伏して崩れかけた落葉にしろ、見るものすべてが光を含んで、大気そのものが輝かしく白っぽくなっているような日だった。そのような快晴ではあるが、鼻筋に触れる空気に…

2017/2/18, Sat.

イザベラ・バード『日本奥地紀行』を返却し、『失われた時を求めて』の続刊を借りるために、図書館へと出かけた。ピントのぼやけたような白曇りの空である。坂の出口あたりでは鳥が何匹も飛び交わし、宙に軌跡の印された裸木に渡ってシルエットと化すと、貧…

2017/2/17, Fri.

イザベラ・バード『日本奥地紀行』の書抜きを始めてまもなく、背後の窓の外から風の流れる音が膨らみ耳に入って、振り向いた。素早い鳥の飛行にも似て、木の葉の横一閃にいくつも切り過ぎて行く窓を眺めているうちに風はみるみる強くなって、竜巻めいて砂埃…

2017/2/16, Thu.

往路、鼻先を擦る空気の感触からすると、気温は高めらしく、そのためか知れないが、坂を上って行くあいだ、周囲から鳥の囀りが降り続けていた。身にほとんど冷たさが触れないのに、春の近づきが思われて、肌に摩擦をもたらさず体温に溶けこむあの軽い空気の…

2017/2/15, Wed.

ベランダへ続く戸口をひらいて境に立つと、肌に乗る陽射しに「照り」の感触があって、春めいている。しかし外に出て、流れる大気のなかに入ると、やはりまだ幾許かの冷たさが身に触れて、陽光の春色が中和される。洗濯物を取りこんだあと、しばらく柵の際に…

2017/2/14, Tue.

往路。坂を上って行くと、空中に刻まれた裸木の枝の縦横の広がりを透かして、市街の方の空に雲が染みるように浮かんでいるのが見える。白褪せたような後ろの空よりも夕刻の水色に濃く、液体じみた感触でありながら輪郭線もくっきりと、段の違いが見て取れる…

2017/2/13, Mon.

散歩に出た。時刻は午後五時半である。外に出ると、煙の匂いが薄く香った。先ほど部屋で着替えながら窓のほうを向いた時には、曇り空があるかなしかの薔薇色をはらんで、さながらコーヒーのなかに注ぎこまれて膜を広げるミルクといった趣に和らいでいたが、…

2017/2/12, Sun.

家を発って道に出て、視界に広がるまばゆさと、肌を包む冷えた空気の感触とを感じるやいなや、満足感を覚え、要するにこれだけで良いのだなと思った。わざわざ街へ出る必要などなく、ただそのあたりを歩けば良いのだろうが、今更引き返して荷物を置き、改め…

2017/2/11, Sat.

風呂に浸かりながら、知覚の拾うものに順々に焦点を絞って行く。浴槽は柔らかな感じのする白なのだが、照明の作用か、何かほかの要素との兼ね合いか、自らの身体が包まれている水は、淡い青緑色――翡翠色と言うべきか、あるいはビリジアンを水で最大限溶かし…

2017/2/10, Fri.

前日の雪は地上には積もることはなかったが、朝食中に山を見やると、木の伐られた斜面には白さがまぶされて残っていた。 * 往路。家を出てすぐ、数歩しか歩かないうちに、正面から流れてきて頬に当たる空気の質が、実に冷たいことを感じ取った。ことによる…

2017/2/9, Thu.

久しぶりに冷えこんだ日で、覚めて寝床を抜ける時から気温の低さが窺われ、午後からは雪も降った。寝床に転がっていた姿勢を起こして窓を目に入れると、白いものが舞い散っていたので少々驚いたものだ。とは言え、白さと粒の立ちはそれほど強くなく、雨に近…

2017/2/8, Wed.

青空のなかに雲多し――地に積もったのがしばらく経ち、溶けかけて水っぽくなるとともに、砂土が混ざって色を灰に濁らせた雪氷のようである。風はそれなりに冷たく、顔の前に幕のようにはだかるが、気温はそれなりに高いようで、空中に細かな虫が湧いて、何度…

2017/2/7, Tue.

往路、濡れたような薄暗い夕刻。下部の欠けて岩石めいた薄白い月が、凪いだ夕青の空に浮いており、頬紅のような暈も殊更に広がらずうっすらとその周囲を彩っている。空気はよく動いて、風が耳元でばたばたと音を立てる。 * 帰路、裏通りの空気は相変わらず…

2017/2/6, Mon.

朝には陽射しが寝床に入って来ていたが、家を発った一一時台には薄暗いほどの曇りになっており、玄関を抜けた時から雨の気配も嗅ぎ取られ、懸念された――実際、一〇分ほどしてから、往路を行っているあいだに散るものが始まったのだが、ひどく微かで、服の上…

2017/2/4, Sat.

料理の途中、洗い物をしていた時だったと思うが、玄関の方から父親が母親のことを呼んだ。呼んでいると、その声を仲介して、居間の卓に就いていた母親に知らせてやると、続けて父親は、ごみ袋はあるかとか何とか訊いて、出ていった母親と話していたのだが、…

2017/2/2, Thu.

母親と墓参りへ。玄関を出ると、身を取り囲んで肌に触れる空気に幾許かの冷たさがある。大気のその「辛さ」が、淡青の空の澄明さを対比的に強める感じのする、輝かしいような日である。 * 駅で叔母を拾って寺へ。我が家の墓所の前まで来ると、こちらは毛先…

2017/2/1, Wed.

朝食中、窓外の、川向こうの集落から弱やかな煙が湧き、漂っている。薄青いそれがなくとも、光の膜に籠められた山の姿は、それ自体でやはり青く煙ったようになっている――と思いながら、いつだったかまだそれほど経っていないはずだが、前の日記にも同じこと…

2017/1/31, Tue.

ベランダに出ると、大層風が吹いて大気をかき回したらしく、竿に吊るされているはずのシャツやらタオルやらがぐしゃぐしゃに乱れていくつも地に落ちていた。それを拾って再度吊るし、ほかのものから取りこんでいるあいだに、また強風が素早く抜けて、いま吊…

2017/1/30, Mon.

発ったのは四時頃だった。玄関を出ると、すぐ傍らの家壁が妙に明るいように、クリーム色に艶が出ているように一瞬映ったのは、我が家は北向きで正面は蔭を帯びているから目の錯覚のようでもあったが、実際、ひどく明るくまた、暖かい日だった――予報では、最…

2017/1/27, Fri.

往路、大層春めいて清朗な日だった。風に固さ冷たさはなく、肌の上をさらさらと流れて行くばかりで、心身がほぐれるような穏和さである。歩調も柔らかになり、身体の力が抜けるようで、裏通りを行きながら頭上を見上げると、丸いような青のひらいたなかに小…

2017/1/26, Thu.

往路、日向のなかを歩きはじめてすぐに、道の傍らから葉に触れる乾いた音が立って、それは林に接した石壁の上の縁、枝から落ちた葉が溜まっているところで鳥が戯れているのだ。近づくと枝に移った姿を見れば、随分と長い尾羽を上下に、柔らかく、鳥というよ…

2017/1/25, Wed.

洗濯物を取りこもうとベランダに続くガラス戸の前に立つと、部屋の内にいる時点で既に光線が抜けてきて目に眩しく、また大層温かい。戸をひらいて境の付近に留まりながら、吊るされたものを引き寄せているあいだも温もりは同じだが、外に踏みだしてひらいた…

2017/1/24, Tue.

七時過ぎに覚めた時、カーテンを引いた窓を向くと、薄い一色の青空のなか一箇所だけかすかに、爪を押しつけたような痕が刻まれているのを見た。端まで空に浸食されてひどく細く孤を描いている、去り際の月である。陽は室内に向けて照射されていて、ガラスの…

2017/1/23, Mon.

アイロン掛けをするために台を卓上に置いて器具のスイッチを入れ、アイロンの表面が熱されるのを待っているあいだに、ソファにもたれて空を眺めた。青みもないではなく、明るめの空気ではあるが、雲が結構覆っていて、かき混ぜられて粘りのあるような風合い…

2017/1/22, Sun.

新聞に落としていた目を上げて窓のほうを見やると、景色が随分と稀薄化しているように見えた。川を越えた対岸にあるものらが、木々であれ町並みであれ山であれ正午前の太陽のもたらした明るい霞のなかに籠められていた。川沿い――と言って川面それ自体は低み…

2017/1/21, Sat.

この朝は長寝のために瞑想をしなかったので、書き物の前にと枕に尻を載せた。翌日に記すだろうこの日の日記のために、生活のうちで幾許かの印象を落としたものを思い返して辿っていたのだが、そのうちに、胡座のあいだで緩く組み合わせた両手に意識が行った…

2017/1/20, Fri.

出勤の支度を済ませて上がって行き、本当に雪が降るのだろうかと居間の南窓から外を見やれば、雪というよりはほとんど微雨に近いようなものだったが、確かに落ちるものがあって、既に降っていると洩らせば炬燵に入っていた母親が引かれて顔を上げた。靴を履…

2017/1/18, Wed.

ベランダに続くガラス戸の前に立った時点から、既に眩しい陽が窓を抜けてきて、目を細めさせる。ひらいて吊るされたハンガーを手に取りながら太陽のほうに視線を向けると、林の上で周囲に棘を伸ばしながら膨張しているそれと、樹冠とのあいだに幾許かの空間…

2017/1/17, Tue.

晴天。道路に放り撒かれた打ち水のようにして、炬燵テーブルの天板上に、液体じみた光が撒き散らされており、びしゃり、という音すら聞こえてくるような輝かしさで、食事を取る合間に目を向けるとひどく眩しい。窓の外でも、そこここが光っている――川向こう…

2017/1/16, Mon.

往路、ひどく寒い。コートを羽織って肩のあたりは動じないが、腹や脇腹を攻められて初めのうちは身体が震えがちである。進むにつれて耳が冷えて痛みだすのにも難儀した。熱を持たせようと揉みほぐしながら街道を行くが、大した効果はないようだった。青い暮…

2017/1/15, Sun.

隣家の庭の、柚子の木の足もと、枯れてほとんど脱色された黄の葉が散って敷かれているそのなかを、鳩が一羽、鷹揚とした調子で歩き回っている。ところどころで地をつつきながら、いかにも邪気のない無害な様子でうろつくのを視線で追っているあいだ、雲が大…

2017/1/14, Sat.

この冬一番の冷えこみと前日から言われていただけあって、寒い日だった。居間に上がって行くと、母親が、雪がちょっと降ってきたと言うので窓に目を向ければ、確かに細かなものが散っている。食事中にも消えたかと思いきやまた軽く舞うのに、母親が風花、と…

2017/1/13, Fri.

往路、街道に出て、日向に入って陽を背にすると大層暖かく、肩口から膝の裏のあたりまで撫でられてほぐれる。その温みを愛しんで久しぶりに裏に入らず、表の歩道を進む。日向はそう多くもなくたびたび蔭が差し挟まれるが、そこを通るあいだも背に点って溜ま…

2017/1/12, Thu.

居間に上がると、窓に寄る。数日前には朝陽のなかで汚れも曇りもなく透明に見えた窓ガラスに、塵の付着なのか、一面細かな、整然としたような水玉模様が張り巡らされているのが顔を近づけると視認される。その眼前の窓と、外の、密度の高い青さの瓦屋根との…

2017/1/11, Wed.

往路。晴れだが空気はなかなかに冷たく、街道で、横を大型トラックが凶暴な音を響かせながら過ぎて行く時などは、巻かれた風が吹き付けてきて、思わず身を竦めるようになる。裏道へ。寺の周りの丘に陽が浸透しており、その朱色に木々の老色がややほぐれてい…

2017/1/10, Tue.

それで新聞からは目を上げて視線を巡らせると、炬燵テーブルの上がひどく眩しい。日向と日蔭の境が生まれており、その境界線の縁が、白さが一線走って固まったように、殊更に輝いている。陽の来たるもとの窓は全面明るく、汚れも曇りもほとんど見当たらず視…

2017/1/9, Mon.

夕刻の空気は冷たく、湿地のような薄青さのなかに月が浮かんでいた。満月までは行かず、下方が欠けているが、わりあい大きい。街道を抜けて考え事をしながら裏通りを進み、途中で目を上げると、黄昏が進んで、正面の空の藍が濃く、深んでいるなかに雲の染み…

2017/1/5, Thu.

坂道に入ると、右側の斜面からがさがさと音が立つ。木の間から見下ろすと、丸みを帯びた鳥が、下草のなかに佇んでいる。首を各方向に振るのをちょっと眺めたが、瞳と対象とのあいだに陽射しの明るみが立ち入って、そのせいで鳥の体色がうまく捉えられず、言…

2017/1/4, Wed.

電車に乗って、座って行き過ぎる外の光景を眺めながら到着を待った。光の満ちた日で、役所の周りに停まったものなど、車の屋根の線上を輝きが次々と滑って行くなかで、人家やアパートの奥に覗いた黄土色のマンションの、手すりがついているのだろうか正面の…

2017/1/2, Mon.

居間に立ち尽くしていると、南窓の外の、太陽の光が染み通った空気のなかを、極々小さな、粉のような虫が群れて飛び回っているのが視界に浮かぶ。何匹か入り乱れながら、柔らかい軌跡で緩く斜めに落ちて行くのが、淡雪の降るのを見ているようでもあるがこの…

2016/12/30, Fri.

ハンナ・アレント/ジェローム・コーン編/中山元訳『責任と判断』を読みはじめた。読み進めているうちに太陽が窓のなかを泳いで、顔の前に光を差し挟ませるようになり、そうするとページの上の文字を見つめていても、その黒い線のなかに瞬間、赤いような光…

2016/12/29, Thu.

ベランダに出ると例によって、林の上で大きく膨らむ太陽が、真正面から顔に向けて熱を送りつけて来て、額や頬のあたりが温かい。端に寄って、右手で額に庇を設けて降る純白を遮り、遠くを眺めた。空気中に満ちる無色で不可視の膜が視線の透過を妨害しては、…

2016/12/28, Wed.

晴天で、坂に入ると、まだ低い太陽が横薙ぎに暖色を送りつけるのに、路上に陰陽の縞模様が生まれていた――右方で斜面となった林に接して伸びるガードレールの影が、青く太く拡大されて道路の中央を通る帯となり、それを左右から陽色が挟みこんで、目の粗く立…

2016/12/27, Tue.

居間に明かりはなく、代わりにカーテンがひらかれていて、そこからいかにも乏しい薄陽射しが、かすかなオレンジ色を帯びながら暗がりのなかに忍び入って浮遊し、午前七時の室内の蔭の粒子の寄り集まりを妨げ、乱していた。 * 午後に雨が降るとか言うのに窓…

2016/12/26, Mon.

六時に駆動するよう仕掛けた目覚ましの鳴り響きで覚めたのだが、まだその時間は部屋の内が暗闇に包まれていた。窓外を見てみても、南の山に接した空は薄墨色に沈んでまだ夜の圏域で、一二月の明け方六時というのはこんなに暗いものかと、もう長いことこの時…

2016/12/23, Fri.

椅子に就くと、南窓から射し入る光が炬燵テーブルの天板に激しく溜まって、視界がひどく眩しい。父親がその上に広げている新聞の表面も、金属質に輝いている。外の山は光によって完全に均されて、滑らかな薄青さのなかに何の起伏も窺えず、麓からは煙が立っ…