読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2017/1/24, Tue.

七時過ぎに覚めた時、カーテンを引いた窓を向くと、薄い一色の青空のなか一箇所だけかすかに、爪を押しつけたような痕が刻まれているのを見た。端まで空に浸食されてひどく細く孤を描いている、去り際の月である。陽は室内に向けて照射されていて、ガラスの…

2017/1/23, Mon.

アイロン掛けをするために台を卓上に置いて器具のスイッチを入れ、アイロンの表面が熱されるのを待っているあいだに、ソファにもたれて空を眺めた。青みもないではなく、明るめの空気ではあるが、雲が結構覆っていて、かき混ぜられて粘りのあるような風合い…

2017/1/22, Sun.

新聞に落としていた目を上げて窓のほうを見やると、景色が随分と稀薄化しているように見えた。川を越えた対岸にあるものらが、木々であれ町並みであれ山であれ正午前の太陽のもたらした明るい霞のなかに籠められていた。川沿い――と言って川面それ自体は低み…

2017/1/21, Sat.

この朝は長寝のために瞑想をしなかったので、書き物の前にと枕に尻を載せた。翌日に記すだろうこの日の日記のために、生活のうちで幾許かの印象を落としたものを思い返して辿っていたのだが、そのうちに、胡座のあいだで緩く組み合わせた両手に意識が行った…

2017/1/20, Fri.

出勤の支度を済ませて上がって行き、本当に雪が降るのだろうかと居間の南窓から外を見やれば、雪というよりはほとんど微雨に近いようなものだったが、確かに落ちるものがあって、既に降っていると洩らせば炬燵に入っていた母親が引かれて顔を上げた。靴を履…

2017/1/18, Wed.

ベランダに続くガラス戸の前に立った時点から、既に眩しい陽が窓を抜けてきて、目を細めさせる。ひらいて吊るされたハンガーを手に取りながら太陽のほうに視線を向けると、林の上で周囲に棘を伸ばしながら膨張しているそれと、樹冠とのあいだに幾許かの空間…

2017/1/17, Tue.

晴天。道路に放り撒かれた打ち水のようにして、炬燵テーブルの天板上に、液体じみた光が撒き散らされており、びしゃり、という音すら聞こえてくるような輝かしさで、食事を取る合間に目を向けるとひどく眩しい。窓の外でも、そこここが光っている――川向こう…

2017/1/16, Mon.

往路、ひどく寒い。コートを羽織って肩のあたりは動じないが、腹や脇腹を攻められて初めのうちは身体が震えがちである。進むにつれて耳が冷えて痛みだすのにも難儀した。熱を持たせようと揉みほぐしながら街道を行くが、大した効果はないようだった。青い暮…

2017/1/15, Sun.

隣家の庭の、柚子の木の足もと、枯れてほとんど脱色された黄の葉が散って敷かれているそのなかを、鳩が一羽、鷹揚とした調子で歩き回っている。ところどころで地をつつきながら、いかにも邪気のない無害な様子でうろつくのを視線で追っているあいだ、雲が大…

2017/1/14, Sat.

この冬一番の冷えこみと前日から言われていただけあって、寒い日だった。居間に上がって行くと、母親が、雪がちょっと降ってきたと言うので窓に目を向ければ、確かに細かなものが散っている。食事中にも消えたかと思いきやまた軽く舞うのに、母親が風花、と…

2017/1/13, Fri.

往路、街道に出て、日向に入って陽を背にすると大層暖かく、肩口から膝の裏のあたりまで撫でられてほぐれる。その温みを愛しんで久しぶりに裏に入らず、表の歩道を進む。日向はそう多くもなくたびたび蔭が差し挟まれるが、そこを通るあいだも背に点って溜ま…

2017/1/12, Thu.

居間に上がると、窓に寄る。数日前には朝陽のなかで汚れも曇りもなく透明に見えた窓ガラスに、塵の付着なのか、一面細かな、整然としたような水玉模様が張り巡らされているのが顔を近づけると視認される。その眼前の窓と、外の、密度の高い青さの瓦屋根との…

2017/1/11, Wed.

往路。晴れだが空気はなかなかに冷たく、街道で、横を大型トラックが凶暴な音を響かせながら過ぎて行く時などは、巻かれた風が吹き付けてきて、思わず身を竦めるようになる。裏道へ。寺の周りの丘に陽が浸透しており、その朱色に木々の老色がややほぐれてい…

2017/1/10, Tue.

それで新聞からは目を上げて視線を巡らせると、炬燵テーブルの上がひどく眩しい。日向と日蔭の境が生まれており、その境界線の縁が、白さが一線走って固まったように、殊更に輝いている。陽の来たるもとの窓は全面明るく、汚れも曇りもほとんど見当たらず視…

2017/1/9, Mon.

夕刻の空気は冷たく、湿地のような薄青さのなかに月が浮かんでいた。満月までは行かず、下方が欠けているが、わりあい大きい。街道を抜けて考え事をしながら裏通りを進み、途中で目を上げると、黄昏が進んで、正面の空の藍が濃く、深んでいるなかに雲の染み…

2017/1/5, Thu.

坂道に入ると、右側の斜面からがさがさと音が立つ。木の間から見下ろすと、丸みを帯びた鳥が、下草のなかに佇んでいる。首を各方向に振るのをちょっと眺めたが、瞳と対象とのあいだに陽射しの明るみが立ち入って、そのせいで鳥の体色がうまく捉えられず、言…

2017/1/4, Wed.

電車に乗って、座って行き過ぎる外の光景を眺めながら到着を待った。光の満ちた日で、役所の周りに停まったものなど、車の屋根の線上を輝きが次々と滑って行くなかで、人家やアパートの奥に覗いた黄土色のマンションの、手すりがついているのだろうか正面の…

2017/1/2, Mon.

居間に立ち尽くしていると、南窓の外の、太陽の光が染み通った空気のなかを、極々小さな、粉のような虫が群れて飛び回っているのが視界に浮かぶ。何匹か入り乱れながら、柔らかい軌跡で緩く斜めに落ちて行くのが、淡雪の降るのを見ているようでもあるがこの…

2016/12/30, Fri.

ハンナ・アレント/ジェローム・コーン編/中山元訳『責任と判断』を読みはじめた。読み進めているうちに太陽が窓のなかを泳いで、顔の前に光を差し挟ませるようになり、そうするとページの上の文字を見つめていても、その黒い線のなかに瞬間、赤いような光…

2016/12/29, Thu.

ベランダに出ると例によって、林の上で大きく膨らむ太陽が、真正面から顔に向けて熱を送りつけて来て、額や頬のあたりが温かい。端に寄って、右手で額に庇を設けて降る純白を遮り、遠くを眺めた。空気中に満ちる無色で不可視の膜が視線の透過を妨害しては、…

2016/12/28, Wed.

晴天で、坂に入ると、まだ低い太陽が横薙ぎに暖色を送りつけるのに、路上に陰陽の縞模様が生まれていた――右方で斜面となった林に接して伸びるガードレールの影が、青く太く拡大されて道路の中央を通る帯となり、それを左右から陽色が挟みこんで、目の粗く立…

2016/12/27, Tue.

居間に明かりはなく、代わりにカーテンがひらかれていて、そこからいかにも乏しい薄陽射しが、かすかなオレンジ色を帯びながら暗がりのなかに忍び入って浮遊し、午前七時の室内の蔭の粒子の寄り集まりを妨げ、乱していた。 * 母親が、午後に雨が降るとか言…

2016/12/26, Mon.

六時に駆動するよう仕掛けた目覚ましの鳴り響きで覚めたのだが、まだその時間は部屋の内が暗闇に包まれていた。窓外を見てみても、南の山に接した空は薄墨色に沈んでまだ夜の圏域で、一二月の明け方六時というのはこんなに暗いものかと、もう長いことこの時…

2016/12/23, Fri.

椅子に就くと、南窓から射し入る光が炬燵テーブルの天板に激しく溜まって、視界がひどく眩しい。父親がその上に広げている新聞の表面も、金属質に輝いている。外の山は光によって完全に均されて、滑らかな薄青さのなかに何の起伏も窺えず、麓からは煙が立っ…

2016/12/22, Thu.

帰路は雨が強まっていた。傘をひらいて道に出れば、即座にばちばちと鳴るものがある。久しぶりに駅前から表に出ることにしたのは、雨の日の大通りの、光が増幅されて明るい賑やかさを好んでのことである。居酒屋も大してないような侘しい田舎町だが、その僅…

2016/12/21, Wed. 

ベランダへ続くガラス戸をひらくとこの日も眩しい光が瞳を射って、物干し竿の銀色のなかに表面が削れて素地が露出したかのような白さが宿っている。太陽は西の正面、冬もだいぶ進んで、二時でも林の樹冠に近い。洗濯物を室内に取りこむあいだ、風が吹き通る…

2016/12/20, Tue.

マフラーを巻いてから玄関を抜け、道路に踏みだして歩いて行くあいだ、身体が内から震える。しかしそれは気候のせいではないようで――陽は既にだいぶ低いが、気温はむしろ高めの日であり、空はすっきりと晴れて光も渡り、南にやや下がった川沿いの家や木々に…

2016/12/17, Sat.

目覚めると、部屋にはまだ朝が満ちきっておらず、向かいの壁の時計は薄暗く沈んでいたが、針が六時半あたりを指しているらしいことが窺えた。はっきりとした寝覚めだった。左向きだった姿勢を、右に寝返りを打ち、カーテンをひらいてちょっと身体を持ち上げ…

2016/12/16, Fri.

ここ二、三日でめっきり気温が落ちて、冬が一層深まった感がある。一番星がはっきりと輝く、暮れきった湖色の午後五時も、風が、吹き付けるというほどの勢いはなくて、道に沿って流れてこちらの身を過ぎていくだけでしかし、肌が震える冷たさである。街道に…

2016/12/15, Thu.

街道に出ると空気が冷たいので、振り向いてみると、背後の空の半分くらいは澄んだ青に晴れているのだが、もう半分は雲の波が寄せて、太陽もそのなかに隠れてしまって、陽の恩恵がない。通りを北側に渡っても、この日は影の伸びる余地もなく、早くも日蔭に覆…

2016/12/14, Wed.

前夜降りだした雨が、朝方あたりまでは残っていたのだろうか、道には湿り気が残っているようで、それが冷気となって足もとから立ちあがって来るらしく、身体が纏う空気は冷たい。街道に出ても、南側の歩道はくすんだような家の影に覆い尽くされて、広がった…

2016/12/13, Tue.

風呂に入る前に、用を足そうと玄関に出ると、小窓から覗く父親の車の白い屋根が、水滴に宿った街灯の反映によってさらに白く、細かな粒模様に装飾されていて、それで雨が降っていることに気付いた。

2016/12/12, Mon.

道端の楓の木は、数日前から、花火の残骸のように萎んで擦り切れたような赤紫色が貧しい葉を枝先に辛うじて引っ掛けただけの、風通しの良い姿になっている。足もとに丸く集めて積まれた落葉の溜まりのなかに、五弁の形がぎりぎり保たれたその葉も混ざって、…

2016/12/11, Sun.

湯に浸かって首を浴槽にもたせかけ、視線を空中にぼんやりと浮遊させると、満たされた湯気のなかに電灯の、乳色めいて丸いような光が渡り膨らんで、室はクリームめいた柔らかさに浸っているのが視覚に捉えられる。その明かりのなかで、タイル張りの壁は余計…

2016/12/10, Sat.

西を向くと、父親の白い車の鼻面に、降った輝きが激しく反射して、視界がほとんど一面、純白に舐め尽くされるかのようである。砂利の上に落ちた葉を平らな敷地のほうへと弾くたびに、陽の掛かったところでは、小石の隙間から土煙が湯気のように立ち上がるの…

2016/12/9, Fri.

顔を上げて一息つくと、ベランダに続く窓のカーテンの隙間から、光が射しこんでいる。畳んだ掛け布団の、青白緑が帯状に描かれた模様の表面に宿って、陰影を伴う布の襞を際立たせているのを見ていると、認識の縮尺が刹那乱れて、山脈の連なりのようにも映る…

2016/12/8, Thu.

そろそろ洗濯物を入れなくてはと上階に上がって、ガラス戸を開けると、ベランダは眩しい。先日のように一面埋めているわけでもないが、足もとの、室内との境の際に葉がいくつか溜まって、スリッパのなかにも入りこんで、軸が覗いている。 * 三時まで一五分…

2016/12/7, Wed.

曇天で陽射しもなく、寒々しい気候である。白っぽい空を背景にして、墓石たちの上空を横に渡る電線の上に、鴉だろうか、鳥が一羽止まって、切り絵めいたまったくの黒い影と化している。 * 墓場の出入り口の両脇にある地蔵に、二人が米を供える。それは何で…

2016/12/6, Tue.

風の強い、と言うよりは、そこまでの激しさはなくとも頻繁に生まれて流れる日で、食事中にも目を上げて視界に入った窓の向こうに、林檎色だったかそれとも橙の強くて樺色だったか、ともかくまだまだ濃い色味のついた葉の群れが、林から飛ばされて無抵抗に宙…

2016/12/5, Mon.

外は薄雲が混ざって、空の青さがちょっと煙いようになっている。太陽はそれでも妨げられずに照っており、ちょうど二つの窓ガラスの、黒い枠の重なりでもって縦に切断されているが、その眩しさは瞳に悠々届く。左目に横から光の先端が掛かって、レンズの表面…

2016/12/4, Sun.

居間に上がって行くと、明かりは点いておらず、四時半で既にほとんど真っ暗である。食卓灯の紐を引くと、ストーブの前で床に直接腰を下ろして、身を温めた。外は空間がまるごと水没したように縹色の冷たさに染まっており、山が斑に溜めた柿色も、いまは青さ…

2016/12/2, Fri.

快晴の日で、ベランダのほうから射しこんだ陽が薄青いシーツに広がって、白んでいる。日なたの温もりが恋しがられて陽のなかに入ると、大層暖かい。足の裏を左右に合わせた上から両手で掴み、前に向けて身体を曲げ倒して、下半身をほぐしていると、目前に寄…

2016/12/1, Thu.

街道へ向かうあいだ、西空の、屋根に遮られたその裏から輝きがかすかに洩れるのが見えるが、薄明かりは貧しく、家壁を色付かせる力もほとんどない。雲は淡雪めいて稀薄だが、諸所に貼りついて空の青さを和らげている。 * 職場を出た途端に、足もとが少々濡…

2016/11/30, Wed.

道を行くと自然と目に入る小さな楓の木は、斜めに射しかかる薄陽のなかで和らいでいる。もう大方唐紅に染まって、内側に淡黄色を残しているが、そうしてみると紅色のほうが常態で、これから黄の色へと移り変わるところのようにも見えてくる。足もとまで近づ…

2016/11/29, Tue.

晴天に誘われて南窓に寄り、外を眺めた。空は澄んで動きなく、近所の屋根には白さが水溜まりのようになっている。風が流れて、下草やら梅の木の貧相な残り葉が揺れるのを見ていると、視界の隅で何か動きが生まれて、そちらに目を移せば眼下の家の、土汚れで…

2016/11/28, Mon.

一一時二〇分に到ってはっきりと意識を取り戻した。窓の外は薄白さが漣を成しているが、太陽の光線もその膜と窓ガラスを貫いてくる。それを顔の肌から、あるいは鼻から吸いこむようにして、意識の混濁を晴らして、保とうとした。 * 視線を地に落として、赤…

2016/11/27, Sun.

景色のなかに雪の白さはもはやなく、道沿いの林は臙脂やら淡い橙やらが混ざって、渋いような香りの、しかし優美な配色を取り戻している。高枝鋏をそのあたりに置いておき、畑のほうに下りていく足もとの、小さな葉の上には、露が乗って、陽射しというほどの…

2016/11/26, Sat.

覚めても起きあがれないままに床から窓を見上げると、青さも覗くそのなかにしかし、灰色の内部にわだかまった巨大な雲が浮かんで、ガラスの大部分を埋めている。滑らかな、両生類のそれのような腹を晒した雲は、その巨体に相応しく停滞しているようで、青味…

2016/11/25, Fri.

三時半を前にしてようやく眠る気になった。しかし、消灯して横たわってみれば、夜更かしのためだろう、不安が身中にわだかまるようで、胸に触れる腕を伝って身体中に響くおのれの鼓動が、気になる。それが聞こえていると、どうしても心臓に意識が行ってしま…

2016/11/24, Thu.

朝になって、布団に入ったまま上体を起こすと、窓の向こうで、数日来の予報通りに雪が降っている。ガラスの左下は結露に覆われてぼやけ、それでなくとも夏に育った朝顔の、萎びた残骸のくっついたままのネットが視線を妨害するが、それでも隙間から、近所の…