2016/10/18, Tue.

 自転車を駆って出発した。だいぶ黄昏れてあたりは沼のなかのようだが、ベストを着けないワイシャツ姿でも寒さはなく、立って漕いでいると背中から温もりが湧くくらいである。この日も下校中の学生たちが横に広がっていそうな街道裏は取らず、町の南側、下の道を行った。人のいない細道を通って、曲がるところでギアを軽くし、急坂を駆け上がって駅前に出ると、頭上に広がる街灯の明るさのためだろう、その裏の空は藍色が随分と深くなって、小学校を抱く丘は黒影に均されて襞など見えず、空との境としてかろうじて視認できる稜線のうねりを見ると、盛りあがってのしかかる巨大な波が連想された。