2016/11/1, Tue.

 行きと同じく肌寒い夜道だが、冷気は肌の表面を覆うのみで、その先の皮膚の奥にまで突きこんで来る力はない。気温も落ちて虫も消えたかと、革靴の足音の反響するなかを行っていると、その固い音の裏に隠れるようにして、遠くから虫の、しかしいっとき豊かに鳴き重なっていたあの硝子色の音ではなく、地味で情のない退屈げな響きが聞こえた。

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