2016/12/4, Sun.

 居間に上がって行くと、明かりは点いておらず、四時半で既にほとんど真っ暗である。食卓灯の紐を引くと、ストーブの前で床に直接腰を下ろして、身を温めた。外は空間がまるごと水没したように縹色の冷たさに染まっており、山が斑に溜めた柿色も、いまは青さに上塗りされて濁っている。そのなかで食卓の上の、三角の傘の暖色灯のみが、ガラスに映ってうっすら中空に、水母のように浮かんで、しかし揺れも漂いもせずに静止している。目を閉じると、目の前のストーブの、真っ赤に燃えながら露出した芯から放たれる熱波が、顔の表面を、唇の下から額まで炙る。顔を左右に傾けながらしばらくその刺激を味わったあと、ふたたび窓に目を向けると、黄昏が進んで縹の色が深まって、明かりの向こうに台所で立ち働く母親の稀薄な影が、左右に動くのが見えた。