2016/12/7, Wed.

 曇天で陽射しもなく、寒々しい気候である。白っぽい空を背景にして、墓石たちの上空を横に渡る電線の上に、鴉だろうか、鳥が一羽止まって、切り絵めいたまったくの黒い影と化している。

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 墓場の出入り口の両脇にある地蔵に、二人が米を供える。それは何でも、墓に持ってきた米は全部使い切ってしまい、持ち帰らないほうが良いから、という話である。地蔵は皮膚病のように苔生しており、色も褪せてその造作も磨り減っているような風情だが、何体かの前には五円玉や一円玉が供えられていて、この時世にも、と思われた。

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 二人がドリンクバーに行った合間に、あたりを見回すと、ほかの席を占めているのはほとんどが中年から高年層、それも男性よりも女性の顔が圧倒的に多い。その各々のテーブルから発される会話の声が、渾然一体となって天井付近まで昇り、一つ一つの聞き分けもつかずに巨大な気体の塊のように満ちているのが、禁煙席にいるのに煙草の煙が朦々と膨らんでいるかのようで、ファミリーレストランとは実に騒がしい場所だなと、改めて思った。

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 前日の記事を書き進めているうちに、外は曇っていたが、大窓に垂れ下がった幕の向こうから、太陽が白い目のようになってその形を刻みつける瞬間も見られた。四時も近づく頃には、僅かなあいだ、薄い陽射しが生まれて、木造りの席の、格子状になった仕切りに掛かることもあったが、館を去って高架歩廊に出る頃にはふたたびの白いような空気である。とはいえ空の、西の方の三分の一くらいは雲から逃れて、接した灰色と比べると場違いなような、明るさの印象を纏った青さが露わである。隣の雲はと言えば、巨大な図体で空を広く埋めているものの、南の山際は覆い尽くせずに残し、その隙間に西陽の橙色が入りこんで、赤熱して溶けた金属のようにぴったりと貼りついていた。