2016/12/15, Thu.

 街道に出ると空気が冷たいので、振り向いてみると、背後の空の半分くらいは澄んだ青に晴れているのだが、もう半分は雲の波が寄せて、太陽もそのなかに隠れてしまって、陽の恩恵がない。通りを北側に渡っても、この日は影の伸びる余地もなく、早くも日蔭に覆われたなかを、ポケットに手を突っこんで進んだ。

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 夜道は非常に寒く、道を行くうちに冷気がスーツの表面に寄り付いて離れなくなり、それが内にも染みこんで来る。下手に身体を動かすと、肌に寒さが伝わってきそうで、身動ぎも控えてしまうような具合で、マフラーの裏に口もとを隠し、ポケットに手を突っこんで二本の腕を固めるようにして歩いた。前夜と同じく、坂を渡るあたりまで来ると正面の空に目が行って、するとこの日も明るく、雲がなくて藍色がくっきりと凍てたなかに、星の煌めきも覗く。振り向いて見上げてみると月は高く、満月で、冴え冴えと光を渡らせていた。裏通りを抜けて街道に出て、歩道を行っている時にもう一度見上げると、近くの電灯と高みの月とが一緒に視界に収まって、そうしてみると、街灯のほうには辛うじて、飾り気めいた金の色合いがはらまれているのに対して、その先の遠くで撒かれた月の明るさには、そのような和らぎは窺われず、病人の顔のような青白さの印象が眼裏に残った。