2016/12/20, Tue.

 マフラーを巻いてから玄関を抜け、道路に踏みだして歩いて行くあいだ、身体が内から震える。しかしそれは気候のせいではないようで――陽は既にだいぶ低いが、気温はむしろ高めの日であり、空はすっきりと晴れて光も渡り、南にやや下がった川沿いの家や木々には薄膜が掛かって、西洋の風景画を連想させるようだった――こちらの身体の調子の問題らしく、肌の表面には冷たさがないのに、芯のほうが冷えているように感じるのは、まだものを取り入れて時間があまり経っていないので、消化が進んでおらずに、体内の機構が熱を生みだすのに苦慮しているのかもしれない。それでも歩いているうちに、街道に出る頃にはその寒気も止まる。背後の西空から照射されるものが家々の合間を縫い通って道に洩れだし、それを受けたアスファルトは薄青い下地のなかに、桜色めいた微妙な色味を仄めかせて、気体のように浮かばせている。北側の歩道に渡ると、進む脇の白い壁が懐かしげな橙色に浸透されており、その上にこちらの影が斜めに伸びる。しかし、南から北まで街道を渡って対岸に届く日なたは、もう少ない。淡く青い蔭のなかを少し歩いて、合間に短く差し挟まれた暖色の地帯に踏み入れば、両方向に行き交う車の影が、地にひらいた矩形を覆いながら互い違いに滑って、こちらの足もとをすり抜けて行った。裏道に入れば線路の向こうに伸び広がる森も、長壁のように立ちあがっているその上端から全面陽に包まれて、紅葉も散って退屈に沈んだ色合いを、それでも仄明るくさせている。