2017/1/9, Mon.

 夕刻の空気は冷たく、湿地のような薄青さのなかに月が浮かんでいた。満月までは行かず、下方が欠けているが、わりあい大きい。街道を抜けて考え事をしながら裏通りを進み、途中で目を上げると、黄昏が進んで、正面の空の藍が濃く、深んでいるなかに雲の染みが固着して、歩きながら視線を固定すると、その雲が奥に引いていくように見えた。そのなかを月が行って光暈を広げると、源に近いところは淡緑めいたかすかな色味が滲み、周縁部は鈍い赤を帯びて、神妙なような色彩の円が生まれる。月の表面は滑らかで曇りなく、雲のこちら側にあるようにしか見えなかった。鈍重にその場に貼り付く雲を尻目に、月だけがすいすいと空の上を動き渡って行くのが、いかにも自由な感じがした。