2017/2/9, Thu.

 久しぶりに冷えこんだ日で、覚めて寝床を抜ける時から気温の低さが窺われ、午後からは雪も降った。寝床に転がっていた姿勢を起こして窓を目に入れると、白いものが舞い散っていたので少々驚いたものだ。とは言え、白さと粒の立ちはそれほど強くなく、雨に近いもので、霙といった風であり、窓に寄って地面を眺めてみても落ちたそばからすぐ消えて行くので、積もりそうもない。畑に続く斜面に生えた棕櫚の木は、葉を大方枯らして、頭にいくらかまだ緑のものが残ってはいるが、身を囲う薄茶色の装いも貧しく、だいぶ細身となっていた。

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 午後五時で、雪はまだ舞っており、黒傘をひらくと粒の擦れる音が始まる。道端の林から鵯の切実げな鳴きが立って、木の下まで来て傘の裏から見上げたが、どこにいるのかその姿は捉えられなかった。深深と、ゆったりと落ちてくる雪粒の様を見ていると、空中に漣の流れが生まれたかのようである。道中、傘を持つ手が大層冷えてひりひりとした。