2017/2/11, Sat.

 風呂に浸かりながら、知覚の拾うものに順々に焦点を絞って行く。浴槽は柔らかな感じのする白なのだが、照明の作用か、何かほかの要素との兼ね合いか、自らの身体が包まれている水は、淡い青緑色――翡翠色と言うべきか、あるいはビリジアンを水で最大限溶かしたような薄い色――に透けている。前方に投げ出されて、浴槽の窮屈さに伸ばし切ることができず、中途半端に曲げられたおのれの脚が、その緑色のなかで不動を保っているのを見れば、物質性が際立つのだろうか、何となく人形のような、自分の脚でありながら主体としての自分から離れたもののような感じがして来る――無論、動かそうと思えばすぐにでも動かすことはできるのだが。水面の、胸に近いあたりには照明の白さが小さく砕けており、身体を、呼吸すらもなるべく殺すようにしてまったく動かさずに静止させていても、液体は常にあるかなしかの波紋を作って、映りこんだ室内の像の上を素早く渡らせて行く。