2017/2/18, Sat.

 イザベラ・バード『日本奥地紀行』を返却し、『失われた時を求めて』の続刊を借りるために、図書館へと出かけた。ピントのぼやけたような白曇りの空である。坂の出口あたりでは鳥が何匹も飛び交わし、宙に軌跡の印された裸木に渡ってシルエットと化すと、貧しく残った葉の影と見分けがつかないようになる。街道に出る境の、ガードレールの向こうに生えた梅の木に寄ってちょっと眺めた。距離を置いて見かけた時の視覚への感触が、これまでとは異なっていたのだが、花のひらきが大きくなって、蕊がばらけて広がっているものがあるのが、紅色のなかに白さを織りこんだらしい。裏通りに入ると、空気はやや寒々しく、家々は白い空の下で黙然としているような様子で、通りのなかのどこを見ても、瞳に定かな色味の触れることがない――せいぜい、ところどころの庭の節くれ立った木に梅が咲いているくらいで、桜においてもそうだが、こちらの趣味は、過渡期の色の混淆と乱れにあるようで、この時も白花と赤く詰まった蕾の混ざっているものが一番良く目に映えた。