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2017/2/25, Sat. 

 外出したのは午後七時を過ぎた頃である。既に暮れきって空は薄黒く、雲が染みのように湧いて、合間に覗く星の光もそれほど明瞭ではなかった。坂を行くあいだ、斜面の下のほう、川の近くのどこかの木で鳴いているのか、鳥というよりは虫の声のような短い囀りが昇って来て、秋の暮れ時を思い出すようだった。比較的温暖な夜で、正面から来る風が身を包みこんでも寒さはなく、顔も膝頭も涼しいくらいで、出る前に入浴で温まった身体の温もりが、コートの下の両肩には留まっていた。公営会館の裏まで来ると人出が多く、俄かにあたりが賑わっているのは、催されたコンサートの帰りの人々らしい。道の端に停まった車の周りに人が集まっていたり、こちらの前では老婆二人が互いに支え合うように歩いたりしながら、皆口々に話しているなかに横の通りの奥から赤ん坊の泣き声が渡ってくるのも相まって、宵闇が活気づくようで、祭りの雰囲気と赤提灯の明かりを眼裏に何となく連想させた。

               *

 帰路は雲がかって白濁しがちの空の調子も、空気の感触も肩口から身内にわだかまる温もりも行きと変わりなく、腹の軽さだけがそこに追加されていた。

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