2017/3/8, Wed.

 味噌汁のために白菜とモヤシを鍋で茹でているあいだに、夕刊を取りに玄関を出た。午後六時過ぎである。ポストに寄るとそこから見上げた空は青さが露わで、しかし曇りも僅かあるらしく、なかに左下の欠けた朧月が東寄りに掛かっている。新聞を持って振り返ると、一部我が家に遮られたそちらの空は、青がさらに染み通って清冷である。奥では林の木々の影が塔のように積み重なって、手前の、道を挟んだ林の縁に集まった裸木の枝振りも、宵掛かる空に黒く嵌めこまれているが、その細かな分枝を仰ぐと疲れ目に影がぼやけるようだった。

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 二〇分があっという間に経った瞑想ののち、二時半になって消灯して就床した。仰向けになって横隔膜のあたりに両手を置いた布団のなかでも、瞑想の続きのようなことになって、頭が冴えて眠りが一向に寄ってこないのに、目をひらけばカーテンが仄白い。上体を起こしてひらくと、随分と明るい丑三つの夜である。家明かりは消えて青写真のように押し静まったなかに、月はないようだが、夜空は色が抜けたようになって、白いとさえ言えそうなほどの明るさに平らかだった。星が午後一〇時の帰路によく見る時よりも露わで、窓ガラスの端に一際大きなものが輝いているのが、網戸と夏に朝顔を張ったネットに邪魔されて、目にしかと掴めないのが惜しかった。