2017/4/15, Sat.

 往路、午後四時。坂の中途の、木の間がややひらいた斜面に、菫の種らしい青紫色の小さ花が密集して一角を埋めている。空はこの日も、端から端まで天色に満たされ澄み渡った快晴である。丘を見れば少し前までは箒を逆立てたようになっていた裸木の地帯に、葉が萌えはじめたようで淡い緑が煙るように掛かって、全体に明るくなったなかに差しこまれた桜の甘い淡紅色がくゆって浮かぶようだった。街道では燕が活発化して、道の両側を繋ぐ電線の上に止まって分かれた尾を振りながら、あるいは巣を作ったらしい家の軒先に寄りながら、泡立つような鳴き声を立てている。小公園の桜は散花が進んで乱れが目立ちはじめており、幹からは緑葉も芽生えはじめていた。過ぎざまになかを覗くと、地には粉が撒かれたように花弁が散っていた。背後から照る陽が暑いほどで、歩いていれば服の内に汗も滲んでくる初夏の陽気である――最高気温は二五度とか言った。鳶が長閑に飛んで声の降る下を歩いて行き、寺のあたりまで来て枝垂れ桜に目を送ると、こちらも散りはじめているようで、薄桃色の合間に隙間が点じられて連なりが薄くなっていたが、それはそれで実をつけた果物の房のようだった。