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2017/4/21, Fri.

 往路、坂を上って行くあいだ、道の左右から鳥たちの声が、各々の持つ律動と声調で、それぞれ自律した流れを形作りながら立ち交わすのが、旋律はなくともまさしく多様な楽器の交錯で織られた音楽を聞くような気分にさせる――そのなかで、初めは頼りなげに浮かびだしながら、まもなく大きく跳ね上がって一際厚く響くのはやはり鶯の声で、こちらの乏しい知識のなかに名があるのもそれのみなのがつまらない。雲のある夕刻で、東のものは色も形もそう強くなく生地に混ざって青を和らがせているが、ちょうど頭上あたりが境となろうか、西の方では砂糖を敷き固めたあとから罅の入ったような白さが空を埋めて、その裏から落日が明るんでいた。その断片が漂うのだろう、かすかな温もりの、肩や腕あたりに触れて馴染む日の入りの気である。街道に接する小公園の桜はだいぶ葉も混じって、薄紅色はほとんど溶け尽くして萼桜となり、暗い紅と緑の混濁して渋い色味を帯びているのが、季節外れにそこだけ晩秋に向かう前の植物めく。裏通りを行って空き地に差し掛かると、向こうの宙を燕が何匹か、湿った毛布めいた青さを後ろに鳴き騒ぎながら飛び回るのが見え、行く手には陽の色が薄く混ぜこまれはじめる。向かいから来て脇を通り過ぎて行く、主婦らしき女性の乗った自転車の、乗り手と乗り物の見えなくなってもまだこちらの横に影が長くあとを引いて残り、するすると遅れて去って行ったあとを見れば自身の影法師も、かなり先まで伸びていた。振り向けば落日が、西の丘とこちらとの距離の関係なのだろう先ほど見た時にはもうすぐにも隠れてしまいそうなほど木々に近かったはずが、そこからちょっと浮かび戻したようなあたりで、雲に遮られつつも橙色の明かりを、大きく膨らませていた。

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