2017/6/28, Wed.

 木の下にも、暖気の漂って身に触れる曇りの昼下がりだった。空は大方白く、雲も厚く思えたが、綻びに青さがちらほらと見えてもいたようで、坂を抜ければ薄陽が眼前に浮かぶ。離れた電線で声高に、曲線的な鳴きを上げている鳥を、画眉鳥らしいと聞いてから表に出れば、少し前には宙を盛んに飛び交っていた燕の姿も声も、街道に見当たらない。裏に入ると鵯が電線に止まっていて、鳴かないなと見て過ぎた直後、一羽をきっかけに一斉に声が立ち、互いのあいだを反射して行き来し、四角い輪郭を描くように、宙に響いた。進めば森の方でも、樹々に紛れて姿は見えず、何を伝え合っているのか、鳴き交わしている。やがていくらか涼しくなったような気がしたが、吹くというほどの動きも空気にはなく、肌が暑気に慣れたというのが本当だろう。
 勤めを済ませた宵も外に出た途端に鼻に温さが匂って、夏至も過ぎて気温の高止まりした夏の夜らしい。西はやや晴れたか、空が青く深まっていた。涼しくもなく蒸し暑くもなく、ただ温いような夜気に、肌は粘るほどでないが湿りを帯びる。闇にのしかかられるような裏の通りを、ほかにひと気もなく、虫の音を共連れに一人で黙々と歩いていると、またこの道の夜を行っている反復に、何か現実感が稀薄になって、鮮明な夢のうちにいるかのような気がしてきたものだ。表で炭酸飲料のペットボトルを買い、手にぶら下げて家の傍まで来て、下り坂を出る間際、林に風が走って、なかから立った響きのにわかに雨音めいたのは、葉が揺れるだけでなく枝から離れて下のものに当たるからだろう。散った葉の、色合いは鈍く濁り気味だが、脇に転がって道を彩っているのをここ数日の日中、見留めていた。