2017/7/4, Tue.

 鶯の鳴く声の、久しぶりに窓の外に盛んに立って、その合間に時鳥の音も差し込まれて届く賑やかな昼間だった。そこから少々下ってから出た往路、夜から台風が来るとか聞いていたが、確かに涼風の先触れはなくとも、真白く起伏のない空と小暗くくすんだような空気に、雨の雰囲気が籠っている。大方降る気色に見えたが、傘に片手を奪われるのが煩わしくて、降れば降ったで、と軽く払った。コンビニでちゃちなビニール傘を買っても良いし、最寄りまで電車を使ってそこから一〇分足らずの道を濡れながら駆けても良い。そんなわけでいつもと同じ、何も手に持たない身軽な格好で発ったが、軽く気楽な身のはずが脚が速まっているのに途中で気づき、そこからはポケットに両手を突っ込み歩調を落として、ぶらぶらと緩いように行った。職場に着いたのは、ぎりぎりだった。
 夕刻から降り出して、勤めたのちの夜にも落ちるものは厚く、薄青いシャツに水玉を付けながら駅へ駆け込み、最寄りまで来ると今度は急ぐ気にもならず、平然ぶって濡れるに任せて雨のなかを行った。坂に入れば木蔭に少しは和らぐかと思いきや、樹の下は葉に溜まった粒が大きく強く落ちてきて、それは髪に吸収されずに顔のほうまで流れてくるから、かえって難儀である。通りに出る頃には頭から膝までそぼ濡れて、前髪を掻き上げた顔面に水が絶えず縦横に蠢いて切りがないが、あくまで走らず、来たるものを浴び続けた。