2017/7/31, Mon.

 宙を乱雑に搔き乱すような蟬の声が降り、濃青の瓦屋根に光が滑って、雲はくっきりと立つでもなくて形態がぼやけ気味だが、正午前の道には夏らしい匂いが薫っていた。最寄駅に着いて電車が入線してくるのを待っていると、陽射しに一瞬、くらりと軽く来た。眠りの少なくて、輪郭が不安定に、細かく振動しているかのような身体だった。それで行きの車内は半分眠って、もう半分は谷崎潤一郎を読んで過ごし、新宿に着くと東南口から外に出た。空は無愛想に曇っていたが、それが蓋となり、停滞した大気には熱が籠っていて、がやがやとした街区を抜けながら肌が塞がれる。
 CD店で目当てのものを購入し、出ると雲がちょっと割れて陽が通っていた。光は暑いけれども、熱線が肌に乗るとほんのかすかな空気の動きでも涼しさとして感知され、大気がどうしようもなく止まっていた先ほどよりもかえって爽やかさが出てきたようでもあった。とは言え照射のなかを歩くのは心もとなかったので駅に戻り、電車で短く代々木に移動して、喫茶店で会合を持った。話して五時前に至ると、そろそろ暑気も和らいだのではと店を出て、今度は歩いて新宿の書店に向かった。街路の先に高く聳えたビルの片面に光が貼りついて真白さを重ね、駅前の大きな横断歩道に出ればその陽射しが斜めに渡って、まださすがに濡れるような暑さである。
 書店をうろついてから出れば外は青みがかっている。人波に紛れて東口付近の横断歩道を渡りながら、人間の膨らませるさざめきのなかにミンミンゼミの声が混ざって、大都会の真ん中の僅か申し訳程度の緑にも蟬が鳴くものだと聞いた。電車に長く乗って最寄りに着くと、頭上に浮かんだ月が、ちょうど上弦の半月だった。空は晴れたようで、木の間の坂を下りながら枝葉に枠取られた藍色のなかに二つ飛行機が、それぞれの方角に交わらず飛んで行くと見たところが、実は一つは動いておらず、その場でちらちら光を震わす星だった。

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