2017/8/1, Tue.

 天気予報を見ると夕方までずらりと降雨の図、朝にはまだ降り出していなかったが傘を持って出勤すると、果たして正午に到らないうちから始まって、職場を離れた夕刻にも続いていた。幾日か見ないうちに、裏道の中途の家を飾るピンクの百日紅が花を増やしており、枝先に作られた集まりが水を含んで重ったのだろう、雨中に垂れて、下にぱらぱらと零れたものもいくらかあった。小さな花の散って転がっているのを、金平糖のイメージを重ねて眺めたいつかの昔があったが、この時はどことなく無残な感じを覚えさせられた。雨で、線路の向こうの林から響いてくる蟬の声は弱い。木の間の下り坂を行くあいだにはしかし、頭上近くから蜩の声が落ちて、弦楽器の搔き鳴らされるのを聞くような具合だった。
 雨は波がありながらも夜まで続き、風呂に入ると窓の外でまた膨らみはじめていた。湯に浸かりながらじっと耳を傾けているうちに一層募って、きめの細かく密な響きが窓いっぱいに迫って、それを受けて耳ではなくて心臓のあたりがほんのかすかに苦しいような、切ないような感じがあった。感傷ということではない。寄せる雨音が胸に沁みこみ、その圧に押されるかのようなところがあった。