2017/8/8, Tue.

 凄まじい湿気の室内に充満した曇天で、朝の早くから非常に蒸し暑かった。台風は石川の沖あたりに抜けたらしく、道に出るとほとんど降っていない。屋内を出てすぐには多少涼気も感じられたが、歩くうちに暑くもなって、風が止まればやはり蒸し暑さを逃れがたい。森の高みに靄が湧かず、雨気があまりないようにも思われたが、じきにやや繁くなったので傘をひらいた。百日紅がますます紅色の量感を増し、重そうに濡れて塀の外まで垂れ下がっている。
 午後には台風はよほど過ぎたようで雨の気配も失せて、余計な荷物となった黒傘を提げて図書館へ、予想通りに席に空きはなく、取って返して出ると陽が薄く現れており、水の抜けた身体に重い暑気だった。ともかく飯を食おうと近くのレストランに入り、食事を済ませたあとに書き物をしようと思ったところが、睡気にやられてモニターを見る目が揺らぎ、言葉の感触を吟味できない。そこで先に眠りを稼がなくてはと駅に戻って、電車内で意識を短く失い続けた。
 乗り換えのホームから望んだ東の空はまろやかなような稀薄さに青く、雲も平たく淡く乗っている。国分寺に着くと駅ビルのなかの喫茶店でしばらく文を記し、六時を前に待ち合わせの改札前に移った。雑踏の合間を満たして籠る熱気が息苦しいほどで、これでは熱中症にもなろうと頷かれた。相手と合流して駅を出て、再開発中の高層ビルを掠めて遠い空に視線を送ると、雲の原のなかに夕陽の橙が忍んでいる。
 古書店を回ろうという話が目的の店は二軒とも休日、仕方なしとバールの類に早めに入って、著名なポップス曲の気怠いアレンジが掛かるなか、軽食をつまみながら話を交わした。九時を間近に出てもまだまだ熱気の籠って粘つく夜気で、空に満ち満ちた夜が色濃い。駅で別れたあとは頭痛に苦しみながら電車に揺られ、最寄りで降りると空が明るく、南に満月が雲をものともせずに特有の白さに冴えていた。結構な頭痛と疲労のために帰宅するとすぐさま横になり、そのまま起き上がれずに休んで風呂に入るのも零時を回る頃になった。