2017/8/23, Wed.

 目を覚ましてカーテンをめくると、久しぶりで晴れ晴れとした、濃く締まった青さの空が見られた。三四度まで上がると言われる猛暑が訪れ、早朝、家にいるあいだから肌は汗ばんでいた。行く手に太陽の浮かぶ朝の道は眩しい。しかしそれほどの陽射しの圧でなく、顔を横にちょっと曲げて斜に構えれば道の先を見通すことができ、光に包まれても息苦しさを感じることもない。青い瓦屋根が縁に光をいっぱいに膨らませて純白の筋を作っているのを見やり、シャツの背をぱたぱたとやりながら行った。
 飯は帰ってから食う習いである。七時から何も入れていないまったくの空腹を抱えて昼下がりの酷暑を渡る自信はないから、帰りは電車を利用する。ものは食わなくて平気でも、水は足りない感じがしたので、カルピスを買って飲み、コンラッド『闇の奥』を読みながら立って電車を待った。目の前に停まっていたのが行ってしまうと、蟬の声が丘から届くようになり、熱気もついてきて、頁の表面がやや明るむ。車内では本を読み続けながら、睡気に纏われていつの間にか目が閉じており、降りると覚めたばかりで鈍い身体に熱波が襲いかかった。坂の入り口に生えた紫陽花は茶色く枯れ尽くしているが、それはそれで美しくはなくとも一つの色と見える。通りざま、辛うじて形を留めた小さな花びらの縁に、ピンク色の残滓が点々と見えた。木の下に入ればツクツクボウシが忙しなく、競うように鳴いており、そこを過ぎると今度はミンミンゼミが左右から、線のように鳴き声を降らして、頭の横がじりじりと刺激された。