2017/8/24, Thu.

 続く暑さのせいで眠りの質が落ちでもしたか、身体のこごって頭が鈍く、脚も固い朝の道だった。家を出ると、林から葉が降っている。坂に入っても、まだ薄緑を余したものも茶色く変わったものもそれぞれに降って、風も感じられないのに、と思って上って行ったところが、出口間際の斜面に立った樹々が薄白い空を向こうに枝葉を柔らかくうねらせてさわ立ち、過ぎると身にも吹いてきた。近頃受けた覚えのない、結構な分厚さの、吹きぶりだった。
 街道にいるあいだはさほどでないが、ふたたび裏に入ると、窄まる道幅と壁となる家々に密にされるのだろう、また膨らんで、すれ違う女子高生も、今日は風がある、と困ったように漏らしていた。スカートを履いているから、男子よりも敏感なのではないか。空は曇って、半端なような青灰色が乱れうねって襞を成しているなかに、陽の艶の仄かな白さも小さく見られて、雲を通ってきた熱は身体の前を覆って膝まで温める。しかし明るさとてあまりなく、駅の近間の小社に生えた百日紅の周りも朝から薄く澱むようで、強いピンクの染みた花々が大して鮮やかにも映らなかった。
 正午を回って早めに引けると晴れており、酷暑が奮って、駅で屋根の下に入っても線路の上を漂う熱気が迫ってくる。最寄りで降りるとあたりを舐め尽くす陽射しが、身を包むと言うよりは容赦なく押し当たるように襲ってきて、思わず目つきを険悪に細めながら負けず押し合うようにしてホームを進んだ。帰路を辿りながら、まったくどこにいても蟬の声が降ってくるなと、別に嘆くわけでないが、心中独語される。その声の源となる林の樹々の、底まで色が完全に染み通った、目覚ましいような深緑が青々と目を捕まえた。