2019/1/25, Fri.

 のうのうと眠って、九時二五分起床。何度も覚めているのだが起床にまで至らない。とは言え、睡眠時間は八時間なのでそこまで眠りすぎているわけでもなかろう。部屋を出て廊下を行くと、母親がちょうど下りて来て、真っ赤な手袋をつけてどうやら大根を取りに畑に行く格好らしい。こちらは階段を上り居間に出て、前日の牛肉の残りを電子レンジに突っ込んで加熱しているあいだ、洗面所で顔を洗う。頭頂部の髪が角のように突き出て寝癖になっていたが、ここではまだ直さず、残り少ない米をよそった。ほか、やはり前日の残りの生野菜のサラダ。新聞記事をチェックしながらものを食べる。読んだのは国際面のインド関連の記事。モディ首相という人は、ヒンズー至上主義団体の出身らしく、何と言ったか忘れてしまったが件の団体がモディ政権下で勢いづいているようで、イスラーム教徒に暴力を振るって死に至らしめるような事件も起きているらしい。原理主義とか至上主義とかの危険性はあらゆる宗教(政治的宗教も含めて)に付き纏うものなのだなと思う。以前、南アフリカ付近でアルビノの人が迫害を受けているという記事を読んだ時にも思ったが、まるでどんな社会状況下であっても少数派というものを弾圧するように人間のなかにプログラミングされた心性が存在しているかのようだ。母親がよそってくれた野菜スープも飲み、林檎を食い、食後、薬を飲み、皿を洗い、使い切ったドレッシングの容器に水を注いでおき、それからジャージに着替えながら視線を送りだした窓の外、近所の瓦屋根が甲虫の背のように艶やかに光を受けていた。そうして自室に帰り、前日の日記を仕上げてここまで記して一一時直前。
 いつものごとく、日記の読み返しに入った。まず一年前。相変わらず明け方に覚醒し、緊張に襲われており、まだまだ回復は遠い。それから二〇一六年八月一三日の記事も読み、ブログに投稿。この頃は多分まだガルシア=マルケスのような具体性のある記述を日記でもしたいという気持ちが少しは残っていて頑張っていた時期だと思うが、結構苦戦して書いていたと思うのだけれど、読み返してみると今の記述とほとんど感じとしては変わらない。進歩があまりないわけだが、しかしこの毎日書く習慣的な日記という形式で、どのように進歩や発展や変化を取り入れていけるのだろう? そうして次にMさんのブログを読むのだが、FISHMANS『1991-1994~singles&more~』を流しており、そうするとどうしても歌いたくなって読みながら折に触れて口ずさんでしまい、その時は当然文を読み進めることはできないので時間が掛かって、二記事読み終える頃にはもう正午を回っていた。腹はそれほど減っていなかったので、散歩に出ることにした。鍵を持って上階に上がり、玄関を抜ける(母親は一一時半頃から歯医者に出かけていた)。外に出て道の上にひらかれてある日向を見た途端、陽が薄いなと思った。歩き出せば風も結構厚く吹き、空には雲が多く蟠っており、快晴とは行かないようだ。市営住宅前の工事現場にはこの日も警備員がたった一人で立ち尽くしており、遠くから見て手もとを何やら動かしているのに、スマートフォンを弄っているのだ、さすがにそうでもしないと暇だろうと思ったところが、近づいてみると自分の服のボタンか何かを触っているだけで、時間潰しの手段も持たぬ真面目な人間のようだった。白さを帯びた緑葉を見やりながら小橋を渡り、坂を上って行きつつ三宅誰男『囀りとつまずき』のことを考える。話者は己の「自意識」をも、刻々と動き変化するその流動性すらをも客体化し、観察―分析―記述の対象にしている、ここに何かしら考えるべきことがあるような気がしたのだ。彼が自分自身を観察する時、その存在は見て、書く主体と、見られ、書かれる主体とに分裂しているわけだが、この「分裂」という語はこの場合、何かそぐわないような感覚があって、むしろ「二重化」とでも言ったほうが良いのかもしれないと考えた。そのうち、書き、見る主体としての話者はどのような様態にあるのか? 著者であるMさんが東京に来た時だからもう二年と数か月前、二〇一六年のことになるけれど、初めてこの作品を読んだ時には、話者はほとんど視線だけの存在と化している、ものを見る機械、あるいは機能となっているとMさんと話したものだが、テクストに即して本当にそうした整理の仕方で良いのか。話者の「自意識」あるいは「内面」(ありきたりで、かつ様々なニュアンスが付き纏う不正確な語だ)は、話者自身に属しているというよりも、この作品ではほとんど世界に属している、世界の一部となっているような気がする。その点でこの書物は、おそらく明確に「私小説」的でありながら、いわゆる伝統的な、「普通」の「私小説」とは一線を画しているのではないかという気もするのだが、こちらは伝統的な「私小説」をほとんど読んだことがないからそれもよくわからない。文体についてはどうだろう? 濃密な形容と長い修飾を伴うあの文体それ自体が、世界の微細なニュアンスを搔き分けて/書き分けて蒐集する装置となっているようにも思われる。そうして蒐集された差異=ニュアンスの欠片が、各々の断章ごとに統合されてまた一つの差異=ニュアンスを形成し、それらの集合が全体として差異の百科事典のようになっている。とすると、この話者の身分というか肩書として適しているのは、「蒐集家」という呼称ではないかという気もするのだがどうだろうか。歩いているあいだはそんなようなことを考えていた。人の姿も見えず、閑静な裏通りを行っていると、一軒の垣根から鳥が飛び立ち、その上の裸木の枝に止まるのを見れば、薄抹茶色の鮮やかな色彩を持ったメジロである。立ち止まってそちらを見つめていると、きょろきょろと頭を動かしていた鳥はふたたび飛び立って、少し先の家の木に移ったので、歩を進めて近づき、また見やれば、メジロは枝の上に乗るのではなく、枝の下側に逆さになって、しかし不安定な素振りも見せずにぴたりと貼りついたようになっているので、そんなことが出来るのかと思った。それから街道に出て、前日と同じように渡ってふたたび裏に入る。短い草の生えた斜面の脇を行くあいだ、風が正面から吹きつけてきて、昨日もここで風が吹いていたなと思い返した。卒塔婆の揺れる音は今日は耳に入らなかった。保育園に掛かると、前方から鵯が二羽、宙を波打ちながら渡ってきて骨張ったような銀杏の裸枝にそれぞれ止まる。こちらも立ち止まってしばらくその二匹の、各々離れた枝に静止して鳴きもせず無干渉にしているのを見上げてからふたたび歩き出し、鳥という存在も多様で多彩で面白いものだなと思った。バード・ウォッチングなんかもやはり結構、人が嵌まるだけの魅力があるのだろう。それからしばらく風は流れず、背に温もりを受けながら進み、駅を過ぎて街道に出て、しばらく行ったところで肉屋の脇から(揚げ物の良い香りが漂っていた)木の間の坂に折れた。乾いた葉を踏みつけてぱりぱりという小気味良い響きを立てながら下りて行き、帰宅。
 食事を取ることに。カップ蕎麦を食おうかとも思ったのだが、連日ジャンク・フードばかりではと自戒して、どちらにせよ芸はないが卵を焼くことにした。フライパンにオリーブオイルを引き、卵を二つ割って落とす。蓋を閉じて熱しているあいだに炊飯器に残り僅かだった米をよそり、小さな豆腐を冷蔵庫から取り出して電子レンジに突っ込んだ。豆腐は小さく破裂した。その後、汁物も同じようにレンジで二分温める頃には卵も黄身が固まって焼けていたので、皿に取り、卓に移って食べはじめた。新聞は二面。「辺野古県民投票3択に 条例改正へ 全県実施の見通し」、「韓国が写真公開 「近接威嚇飛行の証拠」 日本をけん制か」、「「脅威与える理由ない」 岩屋防衛相 韓国側に反論」の三つの記事を読む。そうして食器を洗って片付けると自室に下りて、前夜に歯を磨かなかったのでここで歯磨きをしていると母親が帰ってきた。歯ブラシを口に突っ込んだまま上階に行けば、ソファに就いた母親は疲れたような顔で、荷物を冷蔵庫に入れてくれと言う。マロンケーキを買ってきたと言った――と言うのは、翌日、TやTらと会って誕生日を祝ってもらうのだと知らせたところ、それでは何か持っていったほうが良いのではないかと言っていたのだ。こちらは別に良かろうと払っていたところが、その品をわざわざ買ってきてくれたというわけだった。それで、ヨーグルトや納豆や卵などを冷蔵庫に収め、下階に戻って口を濯ぐと日記を記しはじめた。およそ一時間、書き足して現在二時半である。日記を書いているあいだには、三つの短歌を次々と適当に拵えた。

地球をば丸く束ねて一掴み銀河も星も永劫回帰
犬蓼の赤くはためく園村に太陽落ちて輝き死せり
道という道は傾け海原へ越えて戻って背中を刺せよ

 FISHMANS "なんてったの"を流し、歌ってから、書抜きの読み返しを始めた。一二月三一日から二九日まで。新崎盛暉『日本にとって沖縄とは何か』からの記述。一部を除けばもうだいぶ覚えてきており、一度も読み返さなくても箇所の冒頭を見るだけで記憶を蘇らせることができるものもある。このタイミングだったか、日記を書き終えてすぐだったか忘れたが、ふたたび三つ、短歌を作った。

愚劣さを凍らせておくれ東雲よ曙光淡青宙の彼方に
欲望を耕し育て刈り取って種を蒔く人歩き続けよ
時の瀬に睡蓮目白夾竹桃露を結んで天に煌めき

 読み返しには五〇分ほど時間を使って、それからErnest Hemingway, The Old Man and the Seaを読み出した。物語は老人が魚を引っ掛けてから三度目の日の出を迎え、まっすぐ泳ぐばかりだった魚も円を描きはじめて、いよいよ両者の格闘が始まろうとしている頃合いである。英単語のメモを以下に。

  • ●65: It is better to be light-headed than to lose your strength from nausea.――light-headed: 目眩がする、頭がくらくらする
  • ●66: He just felt a faint slackening of the pressure of the line(……)――slacken: 緩める、弛ませる
  • ●66: His old legs and shoulders pivoted with the swinging of the pulling.――pivot: 旋回する
  • ●66: Then it started out and the old man knelt down and let it go grudgingly back into the dark water.――grudging: 渋々ながらの
  • ●69: It raked back and as the fish swam just below the surface the old man could see his huge bulk and the purple stripes that banded him.――rake: 後方に傾く / bulk: 巨体
  • ●69: His dorsal fin was down and his huge pectorals were spread wide.――dorsal: 背の
  • ●69: They were each over three feet long and when they swam fast they lashed their whole bodies like eels.――lash: 激しく身を振る
  • ●69: On each calm placid turn the fish made he was gaining line(……)――placid: 穏やかな

 それで五時前、食事を作りに上階に行った。台所に入り、まずは前日と同じように卵を焼くのに使ったフライパンで湯を沸かし、掃除する。それから同じように水を沸騰させて小松菜をさっと茹でた。笊に収めて流水で冷やしておき、それからさらに自家製の小さなほうれん草も茹でる。そうして、スパゲッティをおかずとして作ることになった。トマトソースを使ってナポリタン風に仕上げれば良いと言う。それで母親がピーマン・玉ねぎ、椎茸を切って、こちらがそれをフライパンで炒めて行く。茹でてあったパスタも入れて、振って混ぜる横から母親が、ケチャップ、トマトソース、塩胡椒、粉チーズ、などなどと投入していく。BGMはFISHMANS『ORANGE』を流しており、歌を口ずさみながらさらに搔き混ぜて、あとは茹でている途中のウインナーを入れれば完成となったところで、残りは頼むと母親に委ねた。ふたたび散歩に出て、ついでにコンビニに行ってポテトチップスでも買ってくるつもりだったのだ。それで下階に行き、ぼさぼさの頭を隠すために(そう言えば帰ってきた母親と会った際、頭がぼさぼさだよ、そのままで歩いてきたのと問われ、いかにも無職らしいだろうと歯磨きをしながらもごもご肯定した一幕もあった)帽子を被って上がって行ったのだが、それだと変だと言われ、ニット帽を被っていったらと提案がある。それで茶色とオレンジのチェック柄のニット帽のことを思い出し、出してもらって頭に嵌め、ストーブの前に放置されていたタオル類を畳んでから道に出た。ストールを巻いたのでさして寒くはない。空には雲がこびりついて宵の前の、夕刻と夜のあいだに見られるあの清冽な水色を汚しており、南の山際のほうなどは灰色が塗られて埋め尽くされている。市営住宅前の工事現場の、道脇の溝に沿っていくつも並んだカラー・コーンの上で多数の保安灯が、緑と赤を交互に点滅させており、それぞれ不揃いのタイミングで発光するために次々と光が移って行くように見えるのだった。昼にも歩いた坂と裏道を行き、街道に出ると今度は向きを変えず、そのまま西に進む。車の入っていないガソリンスタンドで店員が手持ち無沙汰そうに立ち尽くしているのを見やれば、何もやることがない様子でうろうろとし始める。そこを過ぎて皓々と光の灯ったコンビニに入店する。籠を取ってレジの前を過ぎ、まずおにぎり(ツナマヨネーズ)を入手した。それから冷凍食品の入ったケースのなかからたこ焼きを取り出す。ほか、ポテトチップス二種や飲むヨーグルトにアイスを持って会計へ、中年の女性店員が値段を読み込む横で、彼女よりもよほど若いが歴は長いらしい男性店員が次々と品物を袋に入れて行く。礼を言って退店し、もと来た道をそのまま反対に辿ったが、道中特別に印象深い記憶はない。帰宅して冷蔵庫に入れるものは入れ、自室に置くものは持って下階に下り、Twitterを覗くとダイレクト・メッセージの返信が来ていた。先ほど、Dさんという方から、Fさんですか?とこちらの本名を名指したメッセージが届いており、失礼ですかどなたですかと返事をしながら誰だろうと不思議に思っていたところ、何とUくんだった。Hさんも交えて以前早稲田で読書会を何度か催したことのある仲間である。それで彼だったかと驚き、お久しぶりです、Twitter上とはいえまた会えて嬉しいですと挨拶をして、お元気でしたかと問うておいた。それからJunko Onishi Trio『Glamorous Life』を背景に日記を書き出して、現在七時前に至っている。
 三宅誰男『囀りとつまずき』をちょっと読んでから、食事を取りに行った。台所に入り、米をよそるとともに、赤っぽいオレンジ色に染まったスパゲッティを電子レンジに突っ込む。ほか、野菜スープと大根やトマトのサラダを皿に盛って卓へ。電子レンジで簡単に調理された鮭が出来ると、それをおかずにして餅米入りの白米を頬張る。新聞は四面を読む。「立民、社民と統一会派 参院 「国民・自由」と同数に」、「与野党 糾弾合戦 不適切統計 閉会中審査 野党「アベノミクス偽装だ」」。ほか、衆参の勢力分布が載っていたので、それはここに写しておく。
 【衆院自民党282▽立憲民主党・無所属フォーラム68▽国民民主党・無所属クラブ38▽公明党29▽共産党12▽日本維新の会11▽社会保障を立て直す国民会議7▽希望の党2▽社民党市民連合2▽未来日本2▽無所属10▽欠員2
 【参院自民党・国民の声125▽立憲民主党・民友会・希望の会27▽国民民主党・新緑風会27▽公明党25▽日本維新の会希望の党15▽共産党14▽無所属クラブ2▽沖縄の風2▽無所属4▽欠員1
 テレビは引退した芸能人の今を追うというような番組を流していて、それに高橋なんとかと言っただろうか、元アイドル・女優の女性が出演しており、彼女は義理の両親のダブル介護に追われていると言う。それを見ながら、まったく他人事ではないなと思った。画面に映る義父が転倒して怪我をしたと知らされている際にも、他人事ではないぞと向かいの母親に告げる。まあまだ先のことではあるけれど、しかし人間、いつ階段から落ちて死ぬかわからないものだ。それで食事を終えるといつもどおり、すぐに風呂に入った。この日はあまり長い時間浸からず、さっさと頭を洗って上がると、やはり早々と自室に帰った。そうしてコンビニで買ってきたおにぎりとポテトチップスを食いながら、他人のブログを読む。Sさんのブログの、「遠く」という記事が良かった、三宅誰男『亜人』のなかの、病床にいる大佐の視点がいつの間にかシシトのそれに切り替わっている箇所を思い起こされた。ほかにも他人のブログを読んで九時過ぎ、そして九時半からベッドの上で『囀りとつまずき』を読みはじめた。BGMはFly『Year Of The Snake』。冒頭、"Festival Tune"の七拍子のベース(Larry Grenadier)が実に緊密に張って骨太で素晴らしい。素晴らしかったのでyoutubeで音源を探してTwitterに投稿しておいた。その後、BGMは中島みゆき『LOVE OR NOTHING』に。"てんびん秤"のどろどろとした、タールのように粘っこい黒っぽさは結構凄いのではないか。歌詞も曲も歌唱も三位一体という感じで互いに嵌まり合っているように思う。『囀りとつまずき』は、やはり「自意識」のテーマが結構目につく。ほか、「たまさか」という古井由吉も使い古めかしいような語彙がわりと用いられていて、今のところ三回か四回出てきたと思う。また、話者は他人と正面から目を合わせていないと昨日は書いたが、今日読んだなかには彼が他人と視線を交わし合っていると思しき箇所が確か二つあったと思う。それで二時間読んで、――そう言えば一〇時半頃にはLINEでTともやりとりをした。明日、Kくんとともに誕生日を祝ってもらうことになっているのだが、そこで靴下をプレゼントしてくれると言う。サイズを訊かれたので靴のサイズは二六.五から二七くらいだと答えると、二五~二七のものと二七~二九のものとどちらが良いかと来たので、前者を選んだ。読書中そんなこともあり、二時間を費やすと日記を書き足して、現在もう日付替わりも済んでいる。そう言えばブログを読んだり読書をしたりしているあいだにまた短歌を作ったので下に掲げる。

靴を履く踵を亡くして宙返り夢物語語れ小鳥よ
身投げして割れた仮面をまた集めカンポ・サントに埋めて悼めよ
主語を崩し述語を失してまた明日神が不在の神話を紡ぐ
緑色の空と君とのあいだにはたましい泣いて身はほどけゆく

 それからTwitter上で、Uくんとダイレクトメッセージを使って会話した。こちらが鬱病でダウンして一時日記も書けなかった事情も述べる。Uくんはこちらが未だに日記を綴っていることにびっくりしたと言い、「グルーヴ感」が以前よりも増しているようだと言ってくれた。彼は今大学院生で、ピエール・ルジャンドルの研究をしつつ、しかし詩をよく読んでいるらしい。詩的なものだけを摂取していたいのだが、それだと研究にならないところで少々困っているようだったけれど、最近ではラテン語の勉強も始めたと言うので、素晴らしいですねと称賛した。間歇的に、一時半頃まで話して、また実際に会ってお話ししましょう、今度予定を聞かせてください、というところで会話を締めた。メッセージのやりとりをしている傍ら、出鱈目な短歌をいくつも、三分に一首くらいのペースで作っていたので下に載せる。

聖人の雪が降る日に罪を撒く救いは忘れ骨は地中へ
形のない風が吹く夜に天邪鬼椎の枝葉の川波揺れる
天の川振りさけ見れば葬列の百鬼夜行の星は去来す
白光の眠り儚き宮城に辛い言葉を甘く満たして
擦り切れた時の着物を脱ぎ捨てて我は笑おう緋色の空
スイッチを押して流れる鎮魂歌夢の仔犬の皮膚の痣まで
海辺とはあらゆる比喩の終わる場所油を撒いて詩集を燃やせ
大虐殺血の火達磨の通せんぼ潰れた声で叫べ慈愛を
朝と昼と宵と真夜中溶け合って時の抜け殻砂丘に落ちて
罠に掛かり恋を丸めて捨ててなおあなたの頬の暗く艶めく
愉しみはブラスバンドの残酷さトランペットの泣き声醒めて
軍艦を積んで崩して儲け物苔生す弾[たま]に小鳥は囀る
朝ぼらけ原始時代の戦いの苦しみ招く雲の色かな
苦しみは煙草金塊肌の色奴隷の論理かざして月に
切なさを殺して溶かすその刹那蜥蜴の尻尾ついに戻らず
主人にも奴隷にもならぬ矜持持て尻の黄色い猿の小山で
目くるめく白銀灯の血の涙無色無臭の宝石になれ
神の前で白紙委任の嫌らしさ銅鏡銅貨刀で割って
音楽に踊る雨夜の傘の群れ黒声白声撃てよ左脳を
独裁よ貴様の胸は尖ったガラス歌はいけない身を焦がすから
労働を越えて言葉は手に変われ足は権利に瞼は星に
逆転の世界で鳴らす音楽は血か蜜の味義務など棄てて
白い夜は戦争よりも長いから朝が来るまで痛みと握手
絶望を品良く保つ憂愁は希望も届かぬ空に散らして
くだらない夜に滲んで吐く熱をサディストどもが吸えば泣くだろう
美しく死ねば遺体も未知の星言葉のなかに生まれ変わるさ

 そうして一時四五分、床に就いた。眠気がなく、眠れるか定かでなく、実際三〇分くらいは寝付けずにいて、起きてしまって本を読もうかとも思っていたのだが、そう考えているうちに何とか入眠できたらしい。


・作文
 10:12 - 10:57 = 45分
 13:36 - 14:29 = 53分
 18:17 - 18:47 = 30分
 23:38 - 24:08 = 30分
 計: 2時間38分

・読書
 11:02 - 12:11 = 1時間9分
 14:41 - 15:29 = 48分
 15:41 - 16:50 = 1時間9分
 18:48 - 19:14 = 26分
 20:05 - 21:17 = 1時間12分
 21:31 - 23:30 = 1時間59分
 計: 6時間43分

  • 2018/1/25, Thu.
  • 2016/8/13, Sat.
  • 「わたしたちが塩の柱になるとき」: 2019-01-22「柏手は局所の地鳴り自壊せよ遺跡の柱も園児の積み木も」; 2019-01-23「自転する星に振り落とされぬよう地上の民はうつ伏せになり」; 2019-01-24「長針が落ちる短針が錆びる秒針だけがあなたに寄り添う」
  • 2018/12/31, Mon.
  • 2018/12/30, Sun.
  • 2018/12/29, Sat.
  • Ernest Hemingway, The Old Man and the Sea: 64 - 71
  • 三宅誰男『囀りとつまずき』: 79 - 150
  • 「at-oyr」: 「機種変」; 「遠く」; 「五人」; 「四人」; 「猫は鳥は野菜は皇帝、素麺」; 「寒い」; 「物」; 「国道」
  • 「悪い慰め」: 「日記(2019-01-25)」
  • 「ワニ狩り連絡帳2」: 「2019-01-15(Tue)」; 「「地球星人」村田沙耶香:著」; 「2019-01-16(Wed)」; 「2019-01-17(Thu)」; 「2019-01-18(Fri)」; 「2019-01-19(Sat)」; 「2019-01-20(Sun)」; 「「雲をつかむ話」多和田葉子:著」

・睡眠
 1:25 - 9:25 = 8時間

・音楽

  • FISHMANS『1991-1994~singles&more~』
  • FISHMANS, "なんてったの"
  • Junko Onishi『Musical Moments』
  • Junko Onishi Trio『Glamorous Life』
  • Fly『Year Of The Snake』
  • 中島みゆき『LOVE OR NOTHING』
  • 類家心平『UNDA』