2020/3/17, Tue.

 その一方で、もっとも重要な戦いはフランスとベルギーで繰り広げられた。一九一四年から一八年の四年間、ドイツ軍が塹壕で立ち往生した場所である。今回は状況がまったく違った。計画を何度も延期し変更を加えたのち、西方への侵攻は一九四〇年五月一〇日に開始された。前年秋のポーランド遠征と同様に、国防軍は驚くほどの成功を収めた。オランダはほんの数日のうちに制圧され、五月一五日にドイツに降伏した。ベルギーもそれよりわずかに長く持ちこたえただけで、ベルギー政府はブリュッセルを一六日に放棄し、アントワープは一八日に陥落、ベルギーは結局二八日に降伏した。フランス軍は六月にドイツの猛攻により崩壊し、ドイツ軍は一四日にパリに到着、フランスは二二日にコンピエーニュで停戦条約への調印を余儀なくされた。
 六週間と経たないうちにナチ・ドイツは低地帯諸国を占領し、イギリス軍を大陸から駆逐し、世界最強と信じられていたフランス軍を最終的に破った(その過程で一九〇万人のフランス兵を捕虜にしている)。フランスは四つの区域に分割された。国の北半分と大西洋岸全域を含む最大の区域はドイツの直接の占領地となり、フランス中部および南部には第一次世界大戦の英雄で高齢の元帥フィリップ・ペタンと首相ピエール・ラヴァルが率いるフランス政府が置かれ、アルザス=ロレーヌはドイツに併合された。南東部端の小さな区域はイタリアの占領地域となった。
 (リチャード・ベッセル/大山晶訳『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』中公新書、二〇一五年、138~139)



  • 携帯電話のアラームに応じて七時に覚醒する。ほとんど三時間しか眠ることができなかったのだが――と言うか、床に就いてから入眠するまでにかなりの時間が掛かったので、実際には僅か三時間ですら眠っていないわけだが――、そのわりに肉体の感覚は比較的落着き、まとまっていた。
  • 墓参。雲は果ての低みにかすかに引かれているのみで天気は快晴、墓石の前に立てられた銀色の花受けに陽射しが宿り、通路を抜けていくこちらの歩みに応じて純白の集束が開口部の円周上を滑らかに回っていく。墓地から見える坂の向こうの家屋でも、CDでも吊るされていたのだろうか、何らかの物体に光が凝縮されて、家の側面で強く輝いていた。
  • 墓参後、スーパー「(……)」に寄って茶葉を二袋買った。福岡県八女の品と、静岡県産のものである。
  • 読書に精を出す。J・ヒリス・ミラー/伊藤誓・大島由紀夫訳『読むことの倫理』を早々と読了し――三日間しか掛かっていない――、次に、バーバラ・ジョンソン/土田知則訳『批評的差異 読むことの現代的修辞に関する試論集』を読みはじめた。文学理論あるいは批評の類の著作が続く。読書ノートに手書きで断片的な文言を抜き出すことは、一旦やめることにした。やはり時間と労力が相当に掛かって大変なので、コンピューターで書抜きをするだけの方式に戻すことにしたのだ。読書中はのちに書き抜くべき箇所を手帳にメモしながら進めているわけだが、そのメモの取り方も、頁番号だけではなくて行番号まで細かく記録しておくことにした。今までは気になった記述を含む頁の番号だけ記録しておき、いざ書抜きをする際になってから該当頁を読み返して、ここに興味を惹かれたのだったと思い出し、その前後も考慮してどこからどこまでを写すか正式に決定していたのだ。そのようにして読み返しの手間を敢えて挟んだ方が、文章に繰り返し触れることになって印象に残るのではないかと思っていたわけだが、そうした手順を取ることもやめにした。読み書きを始めてまもない頃には行番号までメモしていたので、初期のやり方に回帰したことになる。
  • バーバラ・ジョンソンという人はポール・ド・マンの教え子で、いわゆる「イェール学派」の第二世代における代表的な研究者と目されていたらしい。二〇〇九年に亡くなっている。何を言っているのかいまいちよくわからない部分にも無論折々に遭遇するものの、そこまで極端に晦渋な文章という感触ではなく、鋭利でありながらも比較的取りつきやすい記述のように思われる。訳文は流麗かつ緊密で、隅々まで念入りに目が配られているのがよくわかり、ド・マンの翻訳者でもある土田知則の力量も相当なものだろうと窺われる出来に仕上がっている。
  • 夕食の品物として大根の葉と豚肉と卵の炒め物を作り、そのほかに鯖も焼いた。
  • 夕食時、朝刊の国際面を読む。シリア内戦が一〇年目に突入したと言う。二〇一五年あたりからロシアの支援もあってアサド政権が息を吹き返し、今では国内の六割ほどを支配して優勢らしい。北西部イドリブ県が反体制派の最後の牙城となっているようだが、その地域もアサド政権が半分以上をものにしており、バッシャール・アル=アサド大統領は次の大統領選でも再選される見通しだ。その一方でトルコが、クルド勢力に対する牽制や抑止のためだろう、北部国境地帯を実効的に制圧しており、クルド人たちも交えて微妙な力関係が構築されている模様だ。シリア内戦における死者は三八万人と甚大な規模を示し、難民は五五〇万人にも上るとのこと。


・作文
 26:37 - 26:59 = 22分(17日)
 26:59 - 27:12 = 13分(16日)
 計: 35分

・読書
 7:57 - 8:43 = 46分(ミラー)
 8:51 - 9:02 = 11分(ミラー)
 10:40 - 11:59 = 1時間19分(ミラー)
 12:36 - 13:50 = 1時間14分(ミラー)
 15:08 - 17:10 = 2時間2分(ジョンソン)
 19:54 - 21:03 = 1時間9分(ジョンソン)
 21:48 - 22:32 = 44分(バルト; 書抜き)
 24:55 - 25:47 = 52分(ジョンソン)
 27:48 - 28:12 = 24分(ジョンソン)
 計: 8時間41分

・睡眠
 3:50 - 7:00 = 3時間10分

・音楽

  • dbClifford『Recyclable』
  • 小沢健二『LIFE』
  • Weather Report『Heavy Weather』
  • Various Artists『Black Night: Deep Purple Tribute According To New York』