2020/4/17, Fri.

 ナチスは占領した地域で、「ゲルマン系」と思われる子どもたちを拉致し、「厳密」な調査と検査をくりかえした。「ゲルマン系」と判定された子どもたちは、ドイツ国内に密かに送りだされ、ドイツ人の養子とされた。いわゆる「ゲルマン化」である。幼い頃に連れ去られた子どもたちは、母国を知ることもなく、自分がドイツ人であることを疑いもしなかった。
 (花元潔編集・解説/米田周インタビュー『アウシュヴィッツの沈黙』東海大学出版会、二〇〇八年、83~84)



  • 一時半まで長寝に嵌まりこむ。睡眠に関しては、大体、短く済む日とだらだら寝坊に耽ってしまう日を交互に繰り返しているような気がする。
  • 新聞にフレイル予防みたいな記事があって簡易な体操が紹介されていたので、まあ読んでみたら良いんじゃないと言って母親に渡したが、受け取りはしたものの炬燵に入ったまま身を弛ませている母親は、スマートフォンを弄っては眺めるばかりで一向に読みだそうとしない。これでは運動不足になるだろうと思う。こちらだって人のことは言えないが、だからまあ一応散歩を始めたわけだ。
  • 食後に玄関の外、トイレの窓を覆う格子に巻きつけられていた模造の植物、ところどころ葉の生えた蔓状の飾りを取り外す。それでトイレのなかにも置かれてあった同種の飾りを持ってきて替わりにつけようということだったが、窓は高い位置にあるので手が届かない。箒を使って飾りを掲げ、格子の柱の上端に引っかけようとしたものの、上手く行かずに結局断念。雑巾やモップの類で網戸を拭き掃除するに留めた。作業の途中で(……)さんが通りかかり、新車にしたの、と車の変化に目をつける。高いだんべ、とか言って遠慮なしに訊いてくるので、母親も思わず苦笑を禁じ得なかった。多分、そんなこと訊かなくても良いじゃないと不躾に思っていたのではないか。(……)さんは結局、リウマチだったらしい。一か月入院したとは言うものの、それでもまあ一応、こうして歩けてはいるわけだ。足もとは真新しそうな、化学的な感じに真っ青な靴だった。
  • Jeff Hamilton Trio『Live At Steamer's』――Jeff Hamilton(ds)、Larry Fuller(p)、Lynn Seaton(b)で一九九九年二月に録音、Los AngelesのSteamer'sにて。Larry Fullerという人はRay Brownのトリオの最後のピアノだったらしい。やはりBrownとの共演盤があるErnestine Andersonとも六年ほど仕事をしていたと言う。ベースのLynn Seatonの方は、Count Basie Orchestraなどで弾いていたようだ。
  • 新型コロナウイルスのせいでLee Konitzが亡くなったらしい。このウイルスは、優れたジャズプレイヤーたちの命をどんどん奪っていっている。Wallace Roney、Ellis Marsalis、川崎燎。John Pizzarelliの父親であるBucky Pizzarelliも亡くなったという話だ。
  • 昨日に続いて少々詩を書いた。それよりも日記の方をさっさと進めなければならないのだが。
  • 管啓次郎『ストレンジオグラフィ Strangeography』(左右社、二〇一三年)を仕舞えた。最初のうちはそこまでピンと来なかったと言うか、あまり良くはない意味で引っかかるような細部もいくらかあったのだが、中盤以降はなかなか楽しめた。と言うか、昨日、詩に意欲が出てからこちらの読みの体制が変わって、そうしてみると大した表現でなくとも目に留まる箇所が増えたのだ。ごくささやかなものであっても、こちらの感覚を惹きつけたり、印象帯に揺らぎをもたらしたりする言葉への眼差しが緻密になり、感受の網の目が細やかになったような気がする。この本が詩に対する回路をひらいてくれたのは有難いことだ。
  • 今日は散歩をサボタージュした。何だか面倒臭かったし、寝坊のために時間が少ない感じがしたので。
  • 二時半、宮沢賢治を切り上げて、糞便を腹から追い出し捨てるために厠へ。父親がまだ起きているらしく、階上からQueenの"Hammer To Fall"が聞こえてきた。