2017-08-20から1日間の記事一覧
分厚い蟬の合唱が坂の全域に降って頭を包み、耳を聾せんばかりの、内に入りこんで侵さんばかりの騒がしさである。低みからは、連日の雨で勢いを増しているらしい沢のざわめきが加わっていた。雨も伝えられる曇り空だが、最寄り駅へと上る合間に肌は汗ばむ。…
玄関を出ると、湿り気の肌を囲んで重いような朝だった。低みに走る川から靄が湧いてわだかまっており、ある高さを境にぴたりと切れてまっすぐな上端を印すその濁りの、電線のあいだに見れば隙間なく緻密に蜘蛛の糸が張られたようだった。数日籠ったあとの外…