2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2017/1/27, Fri.

往路、大層春めいて清朗な日だった。風に固さ冷たさはなく、肌の上をさらさらと流れて行くばかりで、心身がほぐれるような穏和さである。歩調も柔らかになり、身体の力が抜けるようで、裏通りを行きながら頭上を見上げると、丸いような青のひらいたなかに小…

2017/1/26, Thu.

往路、日向のなかを歩きはじめてすぐに、道の傍らから葉に触れる乾いた音が立って、それは林に接した石壁の上の縁、枝から落ちた葉が溜まっているところで鳥が戯れているのだ。近づくと枝に移った姿を見れば、随分と長い尾羽を上下に、柔らかく、鳥というよ…

2017/1/25, Wed.

洗濯物を取りこもうとベランダに続くガラス戸の前に立つと、部屋の内にいる時点で既に光線が抜けてきて目に眩しく、また大層温かい。戸をひらいて境の付近に留まりながら、吊るされたものを引き寄せているあいだも温もりは同じだが、外に踏みだしてひらいた…

2017/1/24, Tue.

七時過ぎに覚めた時、カーテンを引いた窓を向くと、薄い一色の青空のなか一箇所だけかすかに、爪を押しつけたような痕が刻まれているのを見た。端まで空に浸食されてひどく細く孤を描いている、去り際の月である。陽は室内に向けて照射されていて、ガラスの…

2017/1/23, Mon.

アイロン掛けをするために台を卓上に置いて器具のスイッチを入れ、アイロンの表面が熱されるのを待っているあいだに、ソファにもたれて空を眺めた。青みもないではなく、明るめの空気ではあるが、雲が結構覆っていて、かき混ぜられて粘りのあるような風合い…

2017/1/22, Sun.

新聞に落としていた目を上げて窓のほうを見やると、景色が随分と稀薄化しているように見えた。川を越えた対岸にあるものらが、木々であれ町並みであれ山であれ正午前の太陽のもたらした明るい霞のなかに籠められていた。川沿い――と言って川面それ自体は低み…

2017/1/21, Sat.

この朝は長寝のために瞑想をしなかったので、書き物の前にと枕に尻を載せた。翌日に記すだろうこの日の日記のために、生活のうちで幾許かの印象を落としたものを思い返して辿っていたのだが、そのうちに、胡座のあいだで緩く組み合わせた両手に意識が行った…

2017/1/20, Fri.

出勤の支度を済ませて上がって行き、本当に雪が降るのだろうかと居間の南窓から外を見やれば、雪というよりはほとんど微雨に近いようなものだったが、確かに落ちるものがあって、既に降っていると洩らせば炬燵に入っていた母親が引かれて顔を上げた。靴を履…

2017/1/18, Wed.

ベランダに続くガラス戸の前に立った時点から、既に眩しい陽が窓を抜けてきて、目を細めさせる。ひらいて吊るされたハンガーを手に取りながら太陽のほうに視線を向けると、林の上で周囲に棘を伸ばしながら膨張しているそれと、樹冠とのあいだに幾許かの空間…

2017/1/17, Tue.

晴天。道路に放り撒かれた打ち水のようにして、炬燵テーブルの天板上に、液体じみた光が撒き散らされており、びしゃり、という音すら聞こえてくるような輝かしさで、食事を取る合間に目を向けるとひどく眩しい。窓の外でも、そこここが光っている――川向こう…

2017/1/16, Mon.

往路、ひどく寒い。コートを羽織って肩のあたりは動じないが、腹や脇腹を攻められて初めのうちは身体が震えがちである。進むにつれて耳が冷えて痛みだすのにも難儀した。熱を持たせようと揉みほぐしながら街道を行くが、大した効果はないようだった。青い暮…

2017/1/15, Sun.

隣家の庭の、柚子の木の足もと、枯れてほとんど脱色された黄の葉が散って敷かれているそのなかを、鳩が一羽、鷹揚とした調子で歩き回っている。ところどころで地をつつきながら、いかにも邪気のない無害な様子でうろつくのを視線で追っているあいだ、雲が大…

2017/1/14, Sat.

この冬一番の冷えこみと前日から言われていただけあって、寒い日だった。居間に上がって行くと、母親が、雪がちょっと降ってきたと言うので窓に目を向ければ、確かに細かなものが散っている。食事中にも消えたかと思いきやまた軽く舞うのに、母親が風花、と…

2017/1/13, Fri.

往路、街道に出て、日向に入って陽を背にすると大層暖かく、肩口から膝の裏のあたりまで撫でられてほぐれる。その温みを愛しんで久しぶりに裏に入らず、表の歩道を進む。日向はそう多くもなくたびたび蔭が差し挟まれるが、そこを通るあいだも背に点って溜ま…

2017/1/12, Thu.

居間に上がると、窓に寄る。数日前には朝陽のなかで汚れも曇りもなく透明に見えた窓ガラスに、塵の付着なのか、一面細かな、整然としたような水玉模様が張り巡らされているのが顔を近づけると視認される。その眼前の窓と、外の、密度の高い青さの瓦屋根との…

2017/1/11, Wed.

往路。晴れだが空気はなかなかに冷たく、街道で、横を大型トラックが凶暴な音を響かせながら過ぎて行く時などは、巻かれた風が吹き付けてきて、思わず身を竦めるようになる。裏道へ。寺の周りの丘に陽が浸透しており、その朱色に木々の老色がややほぐれてい…

2017/1/10, Tue.

それで新聞からは目を上げて視線を巡らせると、炬燵テーブルの上がひどく眩しい。日向と日蔭の境が生まれており、その境界線の縁が、白さが一線走って固まったように、殊更に輝いている。陽の来たるもとの窓は全面明るく、汚れも曇りもほとんど見当たらず視…

2017/1/9, Mon.

夕刻の空気は冷たく、湿地のような薄青さのなかに月が浮かんでいた。満月までは行かず、下方が欠けているが、わりあい大きい。街道を抜けて考え事をしながら裏通りを進み、途中で目を上げると、黄昏が進んで、正面の空の藍が濃く、深んでいるなかに雲の染み…

2017/1/5, Thu.

坂道に入ると、右側の斜面からがさがさと音が立つ。木の間から見下ろすと、丸みを帯びた鳥が、下草のなかに佇んでいる。首を各方向に振るのをちょっと眺めたが、瞳と対象とのあいだに陽射しの明るみが立ち入って、そのせいで鳥の体色がうまく捉えられず、言…

2017/1/4, Wed.

電車に乗って、座って行き過ぎる外の光景を眺めながら到着を待った。光の満ちた日で、役所の周りに停まったものなど、車の屋根の線上を輝きが次々と滑って行くなかで、人家やアパートの奥に覗いた黄土色のマンションの、手すりがついているのだろうか正面の…

2017/1/2, Mon.

居間に立ち尽くしていると、南窓の外の、太陽の光が染み通った空気のなかを、極々小さな、粉のような虫が群れて飛び回っているのが視界に浮かぶ。何匹か入り乱れながら、柔らかい軌跡で緩く斜めに落ちて行くのが、淡雪の降るのを見ているようでもあるがこの…

2016/12/30, Fri.

ハンナ・アレント/ジェローム・コーン編/中山元訳『責任と判断』を読みはじめた。読み進めているうちに太陽が窓のなかを泳いで、顔の前に光を差し挟ませるようになり、そうするとページの上の文字を見つめていても、その黒い線のなかに瞬間、赤いような光…