2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2017/10/24, Tue.

台風の夜から丸一昼夜とさらに半日を挟んだものの、夕刻に見た川の色は前日と変わらず工作粘土じみた生気のなさで、流れに呑まれて消えた陸地もまだほとんど戻らず浸けられたままのようだった。坂を上って行きながら鼻から息を吸いこむと、顔の真ん中につん…

2017/10/23, Mon.

台風の通って荒れた夜を遅くまで更かし、夜明けも間近に寝床に入って昼まで眠りこけてから覚めると、空はまさしく台風一過の晴天で、網戸に走った光の筋の目に引っ掛かってそこに留まり、窓ガラス一面に汚れも露わなその上に、朝顔の蔓の影が淡い映し絵とな…

2017/10/22, Sun.

台風の迫り来つつあると言う雨の宵、道に出た。肌寒さというほどのものも感じられず、降りにもさしたる勢いはなかったが、林に挟まれた小橋に掛かるとさすがに沢の水音が大きく膨らんで、流れの途中に段差があるのでそこを落ちる水の響きが、樹々に囲まれた…

2017/10/19, Thu.

夕刻に至れば、服を整えて室内にいても首元がやや頼りなく、マフラーを巻きたくなるような空気の冷たさだった。玄関をくぐって脇の傘立てにあった一本を掴むと、これも柄が随分と冷えており、それをひらいて進む雨道にすれ違う中学生らの顔も既に小暗く沈ん…

2017/10/16, Mon.

朝から衰えずに降り続けて盛んな雨の夕方を行けば、南の遠くの樹々も山も褪せた青さに霞まされて、地から天までまとめて水没したかのような暮れの景色である。上着の下にベストも着込んだ装いだったが、時折り傘を持ち上げながら吹く風の、明確な寒さで服を…

2017/10/12, Thu.

午前中には晴れた空が広がっており、寝床から見上げた窓の端にも白く収束する太陽の姿が見えたが、午後に入るとじきに曇って、厚くて固い布を掛けられたかのように一面曖昧な白に塞がった。暮れ方になって道を行くと、近間の八百屋が行商に来ている三つ辻で…

2017/10/11, Wed.

窓の先が鈍く沈んでいるのに気づいて洗濯物を取りこんでから、雨もよいの深まって行き、午後も遅くなると見通し悪く空気は霞んで降っているとも否ともつかず、雨粒の直線的に落ちるかわりに大気中に分散して染みこんだような風合いだった。四時を回って出発…

2017/10/10, Tue.

部屋で読書をしているあいだに背後の窓から暖気の寄ってくる晴れの日、外では風がぶつかりあっては先端で擦れるさまを思わせるようなアオマツムシの鳴き声が、間を置きながら上がり続ける。しばらくののちベランダに出ると、柵に干されたタオルの面[おもて]…

2017/10/9, Mon.

間道をしばらく通り、表へと出て街道を進むそのあいだにも、歩道の上に細く薄青く伸びた自分の影の、懐かしいような穏和な明るさに包まれて、歩くほどに長く引かれていくような斜陽の四時である。表道から一つ折れて正面のアパートの、低く並んだ垣根の葉に…

2017/10/5, Thu.

昼時、ベランダに続く窓がひらかれると、外から光の差し入って床に細長い矩形が見られ、四時過ぎになっても明るさは続き、淡い黄金色の光が窓外の緑に重ねられていた。前日の反復じみた風景だが、この日は空はそうは曇らず、覗いた水色の穏やかに、薄明るん…

2017/10/4, Wed.

四時頃になってアイロン掛けをしながら見やった窓の外で、樹々や山が薄陽を掛けられて少々色を変えている。一方で空が青灰色に沈んでいるのは、ありがちで馴染みの比喩ではあるが、広げられた毛布のような雲がいくらかうねりを形作りつつ遥か先まで覆ってい…

2017/10/3, Tue.

室内にいるあいだから肌に汗の浮かぶ陽気で、家を発った三時半にも露わな陽射しが背を温めた。空には爽やかなような青さも覗くが、街道で見上げた雲は乾いておらず、輪郭も固まらずに灰色混じりで水っぽく、積もってしばらく通行人に踏み崩されて、土を含み…

2017/10/2, Mon.

坂を上りはじめたところで視界のひらいた南を向くと、曇天を背景に黒点と化した鳥の一団の、鳥というよりはむしろ羽虫のように、遠くで小さくぱらぱらと飛んでいるのを見つけたが、空から山の手前に移るとそれらの姿の途端に目に映らなくなった。川を越えた…

2017/9/30, Sat.

木の間に跳ねる鵯の声を耳に坂を上って行き、着いた駅のホームから見上げた空は一面が薄白く、つい先ほど、坂下の道であるかなしかに洩れていた陽射しもいまはもうない。線路を挟んで向かいの道に連れられた犬の、縮れた毛のふさふさとして可愛らしいような…

2017/9/29, Fri.

三時過ぎの明るい道に赤蜻蛉が舞って、斜面の下からそびえ立つ樹の、道と同じ高さの宙に掛かって臥所のような葉叢の上に、ふっと降りて停まったのに足が止まって、ガードレールのこちら側から見つめていた。弱い風に枝葉がちょっと揺れるくらいでは蜻蛉はま…