2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2020/10/31, Sat.

(……)まず、男性と女性の位置は、エコー〔ナルキッソスを愛したが、やつれ果て、ついには声だけになってしまったニンフ〕とナルキッソスの物語を念頭に逆転されている。ここでは女性が池に映り、男性が無力に見つめている。あるいはまた、婦人の映っている…

2020/10/30, Fri.

人間が二つの生物学的な性に分けられていなければ、文学はたぶん必要とされないだろう。また、〔二つの〕性の関係がどのようなものであるかを文学が寸分違わず語ることができるなら、文学の多くはおそらく不要になるだろう。だが、ともあれ、それは文学にセ…

2020/10/29, Thu.

この誘惑と去勢の物語に関して興味深いのは、それがバルト自身の批評的な価値評価システムに図らずも反映されていることである。というのも、「原テクストは、自然な分割を何ら考慮されることなく絶えず破壊され、中断されるだろう」と予告する時、バルトは…

2020/10/28, Wed.

われわれの価値評価は一つの実践としか結びつけることができないが、その実践とはエクリチュールの実践である。一方に書きうるものがあり、もう一方にもはや書きえないものがある。……価値評価が見出すのは以下のような価値である。つまり、今日書かれうる(…

2020/10/27, Tue.

(……)差異は同一性間の空間に生み出されるのではない。それは自己同一性の総体化やテクストの意味の総体化をすべて不可能にするのだ。 脱構築批評のプロセスを特徴づけるのはこうした形のテクスト的差異である。だが、脱構築[﹅3]〔deconstruction〕は破壊[…

2020/10/26, Mon.

ある意味で、批評的差異を生じさせることは、しかるべき批評すべての目標と言えるだろう。批評[﹅2]〔criticism〕という言葉はまさに、「分離する、あるいは選択する」、すなわち差異を生み出す〔differentiate〕ことを意味するギリシア語の動詞 krinein に…

2020/10/25, Sun.

再読は、物語が一度消費(「貪り読み」)されたら、他の物語に移り、他の本を買うように、それを「投げ捨てる」ことを勧める、現代社会の商業的・イデオロギー的慣習に反した操作であり、ある周縁的なカテゴリーに属する読者たち(子供、老人、教師)にしか…

2020/10/24, Sat.

本書全般にわたって関心の対象になるものがもしあるとすれば、それはおそらく、文学ないしは理論の内で未知のもの[﹅5]が立ち働いている、ということの重要性である。未知のものとは断じて否定的=消極的な要因あるいは不在の因子ではなく、往々にして、意味…

2020/10/23, Fri.

ここでの読み〔reading〕は、さまざまな差異を、完全に同定あるいは除去できない別の差異を介して同定・除去する、という手続きにより進められていく。しばしば出発点になるのは二項的な差異だが、そうした差異はさらに把捉困難な差異の働きが生み出す幻想で…

2020/10/22, Thu.

したがって、差異の問題は分離可能性〔separability〕に関わる不確かさ、および同一性〔identity〕内部の漂いとして捉えることができる。そして、結局のところ、何かが与えているものが記述〔description〕なのか不同意〔disagreement〕なのか、情報〔inform…

2020/10/21, Wed.

互いに似てはいないが、割れ目ではぴったり微細な点まで合うという容器の破片のイメージは、翻訳と原作の関係に一致するように思われるだろう。そうした関係では、翻訳は逐語的で正確であり、隅々まで原作に合致していると考えられている。しかし実際にベン…

2020/10/20, Tue.

(……)テクストが与えるのは、テクスト自体だけである。テクストは素材やものを、露にするのと同じくらい隠蔽する。いかなるテクストも「もの」を歪曲し、誤訳していると言うことができるであろう。テクストは単にページの上の語という姿のままでいることで…

2020/10/19, Mon.

私は読むことの倫理を、自分自身を読み解こうとする作家たちの文例を通して探究してきたが、その探究の最終到達地点は、少なくとも目下のところは、読解はその規範としてのテクストに従属するのではなく、テクストが従属している規範に従属するという奇妙で…

2020/10/18, Sun.

(……)自分は内なる光を持っており、自己の中の自己、魂のなかのいまだ小さい神の声という伝統的な意味での良心に基づいて行動していると言う人がいたとしても、そうした基盤を実際に持っているかも知れないし、持っていないかも知れない。それを知るのは不…

2020/10/17, Sat.

構想(conception)という語と、「一般に知られている性格の諸特徴を孕んだ人物を作り出した」という表現と、自然発生的に創り出すペンのイメージに見え隠れしている性的メタファーが、何も考えずに早く書くのが一番よいと論じている引用の後の一節で、さら…

2020/10/16, Fri.

公務員としてのトロロープのエネルギーと想像力は、英国およびその属領全体に亘って、場所から場所へ、あるいは人から人へ、極めて迅速で効率よく情報を伝達するという計画にとらわれていた。彼は柱型のポストの発案者であった。そして小説の創作活動に入る…