2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

2021/3/31, Wed.

『S/Z』においては、〈読みうる/書きうる〉という対立関係が提示された。〈読みうる〉ものとは、わたしには再びそのように書くことができないであろうテクストである(今日、バルザックのよ(end173)うに書きうるものだろうか)。〈書きうる〉ものとは、…

2021/3/30, Tue.

だれが、今なお構造主義者でいるだろうか。ところが彼はそうなのである。すくなくとも次の点においては。たとえば、一様に騒がしい場所は構造をもっていないように彼には思われる。なぜなら、そのような場所では、沈黙か発言かをえらぶ自由がもはやまったく…

2021/3/29, Mon.

〈わたしは好きではない〉――白いスピッツ、パンタロンをはいた女、ゼラニウムの花、いちご、チェンバロ、ジョアン・ミロ、同語反復、アニメーション映画、アルトゥール・ルービンシュタイン、別荘、午後の時間、エリック・サティ、バルトーク、ヴィヴァルデ…

2021/3/28, Sun.

(……)愛の言葉をしつこく繰りかえして、弁証法的な解決を見つけようとする自分を想像してみる。すると、愛の呼びかけの言葉は、わたしがそれを繰りかえし言い、時をこえて日に日に言い続けても、言うたびに、新しい状態をふくむことになるだろうと思われる…

2021/3/27, Sat.

彼は一九六三年ごろには(『批評をめぐる試み』のラ・ブリュイエール論では)、〈隠喩/換喩〉という対に夢中になっている(とはいえ彼は、一九五〇年にG[訳注168: 「G」とは、言語学者のA・J・グレマス(一九一七―九二)のことである。一九五〇年にバルトは…

2021/3/26, Fri.

〈おやつのときの、砂糖入りの冷たいミルク。古い白椀の底に、陶器のきずがひとつあった。かきまわしていてスプーンにさわるのが、そのきずなのか、溶け残るか洗い残されるかした砂糖のかたまりなのか、わからなかった。〉 (石川美子訳『ロラン・バルトによ…

2021/3/25, Thu.

ある前衛芸術の方針は、こうである。 「世界は、まちがいなく蝶つがいが外れてしまっており、激しい運動だけが、すべてを再びかみ合わせることができるのだ。だが、それに役立つ道具のなかには、繊細にあつかう必要のある、小さくて弱い道具があるかもしれな…

2021/3/24, Wed.

したがって、夢見ているのは、うぬぼれたテクストではなく、明晰なテクストでもなく、不確実のカギ括弧や流動性の丸括弧がつけられたテクストである(開いた丸括弧をけっして閉じないようにすると、まさしく〈漂流する〉ことになる)。その夢は、読者しだい…

2021/3/23, Tue.

イデオロギーとは、繰りかえされて〈成り立つ - 固くなる〉ものである(固くなるというこの動詞によって、イデオロギーはシニフィアンの領域から身をひくことになる)。したがって、イデオロギーの分析(すなわち反 - イデオロギー的分析)にしても、(分析…

2021/3/22, Mon.

世間一般の意見は、知識人の言葉づかいを好まないものだ。そういうわけで彼は、知性偏重的な専門語を用いていると非難されて、しばしばブラックリストに載せられた。そのとき彼は、自分が一種の人種差別の対象になっていると感じたものだ。彼の言葉づかい、…

2021/3/21, Sun.

(たとえば)ラカン的な主題が、彼に東京の街について考えさせることはまったくないが、東京の街はラカン的主題について考えさせてくれる。いつもこのようなプロセスをたどる。彼が観念から始めて、つぎにひとつのイメージを作りあげることは、めったにない…

2021/3/20, Sat.

彼の仕事全体は、明らかに、記号の道徳性を対象としている(〈道徳性〉とは〈道徳〉ではない)。 この道徳性のなかにしばしば現れるテーマとして、意味のふるえがあり、それは二重の場をもっている。その最初の状態においては、まず「自然なもの」が揺れ動き…

2021/3/19, Fri.

こうした文彩には、もうひとつ別のものがある。〈贋造術〉だ(贋造術とは、筆跡学の専門家たちの特殊用語で、筆跡を模倣することである)。わたしの言述には、対になった概念がたくさん含まれている(デノテーション/コノテーション、読みうる/書きうる、…

2021/3/18, Thu.

(……)ロマン派作家ふうに恋をしている人には狂気の経験がある。ところが、そのように狂った人にたいして、今日ではふさわしい現代語がまったく見あたらないのだ。結局はそれが原因で、その人は自分が狂っていると感じてしまう。盗用できる言葉がまったくな…

2021/3/17, Wed.

虚構とは、うすく分離させて、うすくはがしてゆくと、彩色された完全な絵が形づくられているというものである。デカルコマニー[訳注133: 絵具が定着しにくい素材の上に絵具を塗り、それが乾かないうちに、二つ折りにしたり、他の紙などを押しあてたりして、…

2021/3/16, Tue.

ステレオタイプは、〈疲れ〉という観点から判断することができる。ステレオタイプとは、わたしを疲れさせ〈はじめる〉ものだ。それゆえに、『零度のエクリチュール』のころから主張されている解毒剤が生まれたのだ。すなわち言葉の〈新鮮さ〉である。 一九七…

2021/3/15, Mon.

かつて強い衝撃を受けて、いつまでもその衝撃がつづいているのは、マルクスの次の考えかたである。歴史においては悲劇がときおり回帰するが、〈ただし笑劇として〉である[訳注128: 「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的事実と世界史的人物はいわば…

2021/3/14, Sun.

明らかに彼は、(兵役を免除されている、と言うように)〈意味を免除されている〉ような世界を思い描いている。それは『零度のエクリチュール』を書いたときに始まっており、そこでは「いかなる記号も存在しない」ことが夢見られている。そのあと、この夢は…

2021/3/13, Sat.

(フーリエふうの)ユートピア。もはや差異しかなくなり、その結果、異なっていることがもはや(end117)排除しあうことにはならない、といった世界である。 サン=シュルピス教会のなかを歩いていて、偶然に結婚式が終わろうとするところに出くわし、彼は排…

2021/3/12, Fri.

ほんとうの暴力とは〈自明のこと〉という暴力である、という暗い考えから彼は離れることができなかった。明白なこととは、暴力的なことなのだ。たとえ、その明白さがおだやかに、寛大に、民主的に示されていようとも、である。逆説的なことや、明白ではない…

2021/3/11, Thu.

彼がミシュレのなかで気に入った点は、フランスについての民族学を創始したことである。顔や食物や衣服や体質といった、もっとも自然だとみなされている対象を歴史学的に――すなわち〈相対的に〉――検討する意志と技術をもっていたことである。彼は他方で、ラ…

2021/3/10, Wed.

彼は、「法」および/または「暴力」の名のもとに表明されるのではない言述をなそうと努めている。言行為が、政治的にも宗教的にも学術的にもなることなく、そうした言表すべてのいわゆる残滓や補足でありたいと望んでいるのだ。このような言述をなんと言え…

2021/3/9, Tue.

演劇(切り取られた場所である舞台)とは、〈ウェヌスの優美さ〉の場そのもの、すなわち、(プシュケとその灯りによって)見つめられ照らされているエロスの場そのものである。脇役や端役でも、その人物に欲望を感じさせるための何らかのモチーフを表わしさ…

2021/3/8, Mon.

自分の〈プライバシー〉を打ち明けるときは、もちろん、わたしは自分をもっとも危険にさらしている。「スキャンダル」の危険ではない。そのときわたしは、自分の想像界をもっとも強い堅固な状態で見せているから危険なのだ。想像界とはまさしく、他人が優位…

2021/3/7, Sun.

わたしは〈発信者〉社会に生きている(わたし自身も発信者のひとりだ)。わたしが出会う人や、わたしに手紙をよこす人それぞれが、本やテクスト、報告書、パンフレット、抗議文、劇場や展覧会の招待状などを送りつけてくる。書いたり生みだしたりする楽しみ…

2021/3/6, Sat.

映画『オペラは踊る』は、まさにテクストの宝庫だ。なんらかの批評的論証をおこなうときに、カーニバル的テクストの狂った仕掛けが大騒ぎを始めるという喩えが必要になったら、この映画こそが提供してくれることであろう。大型客船の船室、破かれる契約書、…

2021/3/5, Fri.

言語学とは、メッセージあるいは言語活動を対象としなければならないのだろうか。すなわちこの場面では、〈耳にするとおりの表層的な意味〉を対象とすることになってしまうのだろうか。そうではないあのほんとうの言語学を、コノテーションの言語学を、何と…

2021/3/4, Thu.

〈主体とは、言語活動によって生みだされた結果にすぎない〉という原則のもとに書かれたすべてのものに、彼は連帯感をもっている。ついには学者が学問の叙述のなかに含みこまれてしまうような、そんな非常に壮大な学問を彼は思い描いている。それは、言語活…

2021/3/3, Wed.

『零度のエクリチュール』においては、(政治的な)ユートピアは、社会の普遍性という(素朴かもしれない)形態をまとっている。あたかもユートピアは、現在における悪のちょうど正反対のものでしかありえないかのようであり、あたかも分割にたいしては不分…

2021/3/2, Tue.

彼をとりまく諸体系との関係において、彼はいったい何なのであろうか。むしろ残響室であろう。彼は考えたことを再現するのが苦手なので、ただ言葉についてゆく。語彙をおとずれる。すなわち語彙に敬意を表するのだ。概念を〈援用〉し、それらの概念をひとつ…