2014/2/20, Thu.

 日記を翌日にまわすことにしてさっさと寝た甲斐あって八時に起床した。おそろしく冷えこんだ朝だった。雪のために出勤時間の遅くなった母が先日の葬儀の礼の手紙をI.Yさんあてに書いていた。食後に葬儀で飾られた果物籠のメロンを切ったが、舌に酸味がぴりぴりくるほど熟していた。このぶんだとまだ残っているもうひとつのメロンは食べられなくなってしまうかもしれなかった。
 Charles Mingus『Mingus Three』、『Pithecanthropus Erectus』、『Tijuana Moods』と流しながら前日の日記を書き、ミシェル・レリス『幻のアフリカ』を十頁読み、マルセル・プルースト/鈴木道彦訳『失われた時を求めて 1 第一篇 スワン家の方へⅠ』を読みつづけて読了した。本の上に光を落とした太陽はだんだんと高度を増し、直角に近づいた光線は目に入りこみ、あるいは髪を温めた。窓の外にはられたネットと夏の蔦草の残骸が揺れると、タータンチェック上着やカーテンにまだらに投げかけられた光の点も揺らめいた。プルーストを書きぬいている時間がないので、父のPCの横にあるプリンターで該当箇所を印刷した。昨日読んでいるときから気になった場所には付箋を貼っておいた。全部で二十枚になった。それからビーフシチューの牛肉の代わりに豚肉を使ったものを食べて、風呂に入った。
 風呂を出て、リビングのソファの上で歯を磨きながら携帯をもてあそんでいると、カーテンの向こう、東側の窓の上から白い何かが入りこんでいるのに気づいた。屋根から張りだした雪だった。レースカーテンをわずかにあけてみると、黒く点々と汚れた雪の下端、あちらこちらに氷柱ができ、絶え間なく水を落としている。なかにはかなり大きく伸びたものもあり、スポイトのように雫を垂らすその体は汚れた母体とは違って透きとおっていた。
 Virginia Woolf "Kew Gardens"を聞きながら図書館に行き、CDと本を返し、プルーストの二巻と三巻は再度借り、CDはFretwork and Clare Wilkinson『The Silken Tent』と『Buena Vista Social Club Presents Omara Portuondo』を借り、新着図書には気になるものが色々あるけれど借りまいと思いながらしかし佐藤亜紀『小説のタクティクス』だけは借りてしまい、それから美術、写真、工芸、文学、全集、哲学、歴史の棚などをひたすら見つづけて思ったのはやはり(……)図書館と比べると蔵書の貧困さが如実で特に美術系の棚なんてお話にならないくらいで困ったものだが四時半をむかえたので職場に行くことにして帰り際にボルヘス『不死の人』をリクエストしておいた。
 労働後、コンビニに寄って唐揚げ棒と諸々の菓子を買って寒い夜道を歩いて帰宅して早々洗濯物を入れるのを忘れていたことを母にぐちぐち言われてうんざりしたが文句は言えないと言いつつ実際には言ったわけだが食事をしながら借りてきた佐藤亜紀を読み風呂に入ってからも布団のなかで読んだが眠気に耐え切れなくなったので寝た。