2014/6/19, Thu.

 七時過ぎにアラームが鳴っても起きられなかった。どうしてもまぶたがひらいたままにならなかった。光が射しこんで、暑い朝だった。汗をかいて布団をはぎとってもまだ起きられなかった。八時半になってやっと頭を起こした。ひどく眠かった。上にあがって顔を洗ってもまだ頭にしびれが残っていたから、もう一度洗った。昨日の素麺の残りを玉ねぎと煮こんで食べた。食べながら三月はじめの日記を数日読みかえした。
 部屋で日記を書いた。途中からヘッドフォンをつけて、ベートーヴェンの「田園」を流した。書き終わるともう十時半も過ぎて、また数時間すると労働に行かなくてはならないからげんなりした。ベッドにごろりと寝転んでプルーストを読んだ。昨日だらだらしてしまったから、今日はしっかりやるつもりだった。眠くなりながらも眠りには落ちなかった。プルーストはもはやおもしろいとかおもしろくないとかそういうことではない。蓮實重彦プルーストを最初から最後まで全部読むなんていうやつは馬鹿だ、(物語ではない)小説というのは百科事典みたいなものでどこから読んだっていい、というようなことを言っていたけれど、そういう蓮實もきっと一度はすべて読んだ。プルーストのあとはミシェル・レリス『幻のアフリカ』も読んだ。
 上にあがったのは十二時か十二時半ごろだった。昼食には食パンを二枚食べた。マーガリンがなくなったと思ったらいつの間にか新しいものが冷蔵庫に入っていたから、バターは使わなかった。食べたあと、そのままリビングで柄谷行人『批評とポストモダン』を読んだ。風呂を洗って、洗濯物を入れたころには空はもうくもっていた。ときおり強い風が吹いて、木の葉がばたばた揺れて、なにかが落ちたり転がったりする音が聞こえた。二時を過ぎて風呂に入った。ひげをそった。最近は職場でマスクをつけていない。マスクをつけて働いていると、顔の覆われた部分に油がすごくたまって、終わるころにはべとついている。風呂を出て、歯をみがいて着替えてからリビングでまた読書をした。時間が少なかった。読書の時間を少しでも持つために電車で行こうかと思ったけれど、やっぱり歩きたかったから三時十五分には家を出た。
 青と白と灰色が淡くまざりあって広がった空で、うすい色のなかにもたしかに濃淡の差があってやわらかくうねっていた。雨は降らなかった。大通りに出たところで工事をしていた。警棒を振りまわす交通整理の人や工事の作業員はみんな褐色に焼けた顔をしていた。トラックの荷台からおろされた、アスファルトなのか知らないけれど濃い藍色の真新しい石粒が湯気をたてて、作業員がそれをじゃりじゃり広げていた。表通りを歩いた。高校生も帰宅時間で、高校へと折れる道から次々と出てきた。集団は横断歩道を渡ってそのまま裏通りに入っていく。こっちが歩いていた道路の左側の歩道は二人連れが多く歩く。ひとりで歩いている人は横断歩道を渡らないで、右側の歩道を足早に行く。高校生はみんな歩くのがはやくてどんどん抜かされていった。遅いのはカップルくらいで、Bob Dylanみたいなパーマとすごく小さい女の子のカップルがとろとろ歩いていたから抜かせた。
 四時間くらい働いた。つかれた。
 職場を出たら雨が降っていた。コンビニに行ったら傘が見当たらなくて、スーパーに行った。入り口のすぐ横に傘が集まっていたけれど、六十センチのものしかなかった。ビニール傘と、ついでにジンジャーエールと歯ブラシとじゃがりこを買った。千円にはならなかった。出たらもう雨はやみはじめていて、せっかく買ったから少しさしたけれど、すぐに完全にやんでしまったからつまらなかった。安っぽいビニール傘を持てあましながら夜道を歩いて帰った。星も月も見た記憶はない。
 帰ったらカレーができていた。食べ終わるともう九時になった。風呂に入ったあとは柄谷行人『批評とポスト・モダン』を読んだ。十二時を過ぎて電気を消した。眠りに落ちかかっていたら耳元で蚊の羽音がしてびくりと起きた。面倒で放っておいたらまた来たから、しとめてやろうと電気をつけてじっとしていたけれどそうするとどこかに行ってしまった。目が少しさめたから『批評とポスト・モダン』を読んでいたら、携帯が鳴って、Mさんだった。いまのところ大丈夫だというからひとまず安心した。やりとりをしてからも少し読書して眠った。今度は蚊は来なかった。