ふたたび朝からの労働の日、五時半に仕掛けた目覚ましで覚醒した。三〇分間寝床に留まってから瞑想を六時五分から一三分まで、そうして上へ行き、前夜の麻婆豆腐の残りを用意して食った。七時前に自室へ帰り、インターネットを回ったのち、七時二八分から再度の瞑想を行い、三九分まで座って上へ、制汗剤ペーパーで肌を拭くと風呂を洗った。その後ギターをほんの少しいじってから着替えて出発、瞑想を二度したためか、眠気の残滓はほとんど感じられなかった。とはいえ、朝八時から陽射しが重たい。汗をかきながら街道に出ると、この時間から既に新しい道路開通の工事に従事している人々も働きはじめており、浅黒い顔の警備員が、ラインの入った白い制服に身を包んで立っていた。空には雲が多い。白い輪郭の内、ところどころに灰色がはらまれているが、それらの雲は空に溶けずに密度を持って寄り集まったもので、雲海の小さな隙間に覗く青は色濃く、明瞭な階層の違いがくっきりとした対照をなしていた。手ぶらの装いでてくてく歩いて行き、職場に着くと四時間ほど労働、一二時半過ぎには退勤した。働いたあとのために身体から水分が抜けていて、そこに液体じみた陽射しと熱波であるから熱中症になりはしないかと恐れられた。額や胸やに貼り付く熱のなかを進むと、サルスベリがそこここで花を付けている、鮮やかな、味のするような紅色である。空には朝よりも雲が増えていて、隙間がなくなり閉じているが、陽射しはそれを容易に貫通して降った。雲がはらむ灰色には青が足されて、予報の通り雨が予感される。裏通りの道中、オレンジめいた色のトンボが数匹飛び交っており、また、コンクリートの上に逆さになってうごめき、力尽きようとしているものも見かけた。朝九時頃には、職場のなかに入って飛び回り、女子高生を慌てふためかせる一匹もいたのだった。帰宅すると一時過ぎである。母親は出掛けている、前日に父親が四十九日に行った親戚の老婆に、よくわからないが、米を取りに来てくれとか言われたらしい。居間で服を脱いで洗面所の籠に入れてしまい、自室に帰ると下着一枚になった。そのまま上へ行き、水を飲んでから食事、釜には褐色の五目ご飯が入っている。キャベツを適当にざくざく切って大皿に盛り、即席の味噌汁も添えてゆっくり食べ、結婚式でもらった返礼品のクッキーも食べると二時過ぎだっただろうか。胃には痛みがなく、違和感もほとんどないようだった。自室へ帰ったが、気怠さにやられて何をする気も出ず、インターネットを回った。都知事選関連のニュースや、インターネット民の反応などを閲覧し、宇都宮健児が伊集院光のラジオに出ているのを聞いた。それで四時である。ニコニコ生放送にも出ていたらしいので、URLをメモしておいて、四時から書き物を始めた。五時頃に母親が帰宅した。それからも打鍵を続けて、六時一〇分にようやく、七月三一日の記事を終えた。総計で一五〇〇〇字ほどになった。夕刻でも非常に暑い。肩の回りに熱が溜まり、肌は汗で脚のほうまでべたべたとした。そのまま前日の記事に入る気力がなかったので、ベッドへ寝転がり、じきにうとうととして、裸の胸に薄い布団を掛けて眠った。それで八時である。起きると身体が固まって重い。上階へ行き、洗面所に入って顔を洗うとともに、水を飲んで身体の固さをほぐし、意識の明るさも戻してから、食事にした。また胃のためにキャベツを切り、ほかに五目ご飯に串カツ、ネギとワカメの味噌汁を卓に並べた。食べて九時前、母親があまりに暑いと言って部屋を閉め切り、エアコンを点けた。シャツ類にアイロンを掛けようとすると、九時からのニュース番組に小池百合子新都知事が出演している。それを眺めながらシャツの皺を伸ばして、それから風呂へ行った。やはり暑くて浸かる気にならないので、窓を開けて浴槽の外に留まり、普段は止める換気扇も点けたままにして、湯を浴びた。出ると九時四〇分頃、体重を量ると五五. 一五キログラムで、非常に久しぶりに五五キロ台に掛かっていた。階段を下りて自室に入ると、窓外から雨音が始まっている。インターネットを閲覧し、一〇時からこの日の事柄をメモするのに二〇分を用い、それから新聞記事を写すことにした。数日分、できないでいたので、七月二九日の分からである。ほとんど裸に近い格好でいてもまことに暑く、カーテンをひらいて網戸を露出させたところが、風が全然入ってこない。肩の後ろや腕の周りに熱が纏わりついて、それが露ほども乱される気配がない。この日はニュースに触れるのは二九日の新聞を写すのみで終いとし、それからGabriel Garcia Marquez, Love in the Time of Choleraをひらいた。ほんの数ページ前線を進めたあとは、前夜と同じくW・G・ゼーバルト/鈴木仁子訳『目眩まし』の読書である。下着一枚で寝そべっていてもまったく寒気が滲まない、これはどうやら熱帯夜ではないか。一時頃まで読むと瞑想を始めたのだが、枕の上に胡座をかいて座り、呼吸をしているだけだというのに、脚の裏に汗が湧いてきて暑く、それが嫌で一〇分で終わらせた。アイマスクを付けて消灯、寝入り端に一度、金縛りめいて呼吸が苦しくなった時間があった。息を確保するとともに意識が戻って呪縛は破れて、再度眠りに向かうと今度はつつがなく落ちていったようである。