2016/9/2, Fri.

 記録によると九時四五分には覚醒したらしいが、例によって携帯電話を弄ってウェブを回っているうちに一一時を越えた。寝床を抜けて、上階に行くと、確かうどんが残っていたのではないか。汁の残りを使ってそれを煮こんで食べ、室に帰ると、新聞を読んでから読書に入った。その頃には既に一時四〇分を迎えていた。読みはじめたのは、マルセル・プルースト/鈴木道彦訳『失われた時を求めて』の五巻である。本篇以外も含めると全部で六〇〇ページほどある五巻は、それまでの巻より一〇〇ページほど多い分重量があって、仰向けになって顔の前に掲げると腕にずしりと重みが掛かる。読書は三時一分に一度中断しており、その後三時二五分から再開されている。この間、何をしていたのか定かではないが、確かアイロン掛けをしに行ったのではなかったか。済ませて戻ってくるとまた本を読んだのだが、それはすぐに切りあげて、三時四二分から瞑想を行った。五五分まで一三分間座ると、労働前に前日のことを少しでも記しておこうと、書き物を始めた――それで進めていたところが、母親が部屋に来て、五時にシャワーを浴びるのかと訊く。そうだと答えると廊下を通って、何かやってくれればいいのにと洩らしながら階段を上がって行くので、書き物を中断して(四時二三分だった)上に行った。カレーを作ると言っており、調理台の上には野菜が転がっていたので、手を洗ってそれらを切り分けた。調理台下の収納棚から久しく使っていなかった大鍋を取りだし、油を垂らした上にチューブのニンニクを落として、最弱の火で温めながらかき混ぜた。香ばしい匂いが立ったところで野菜を投入し、弱火でゆっくりと炒めていき、肉も入れて赤みがなくなると水を注いだ。既に五時直前だったのでこちらの役割はそこまでとしてあとを引き継いでもらい、空腹を幾らばかりか埋めるためにゆで卵を食った。それが腹に馴染むのをちょっと待ってソファに座った。南窓から外に視線をやると、空には薄雲が掛かっており、それは明確な形を持って浮かぶというよりは空に同化して青さを稀薄化させるもので、青みの比較的残っている領域も、抑えられて濁ったような、煙いような色合いになっていた。五時を回ると浴室に行って熱いシャワーを浴び、しっかりシャンプーも使って頭を洗い、身体をたわしで擦ると上がった。既に五時二〇分前で、残り時間がなかったので急いで下階に行って、まだ水気が残っている肌の上から服を着こみ、なおざりに歯も磨いて、出発に向かった。自転車を駆って坂を上って行く。街道に出ても西陽の色は見えず、首を横に曲げつつ頭上を見上げれば、西寄りの雲の裏が、ほんの僅かにほかよりも明るみをはらんでいるような気がする程度である。特段急がず裏通りを走って行き、職場に着いて入ると、新しい上司が出てきたので挨拶を交わした。それから働きはじめたが、八時台のあたりから雨が降りだして、強い音が外から響いて聞こえる場面もあり、帰る頃になっても変わらず結構降っていた。それで一旦、やまないかどうかと様子見をすることにして、授業記録をチェックしたり同僚と雑談をしたりしていたが、どうも変わる気配がないので、九時四五分頃になると諦めて帰ることにした。濡れながら帰りますと残して退出すると、濡れたロータリーのそこここに白さが美しく輝き弾けていた。自転車に乗って走りだすと、結構な大粒の雨で、太腿の上にぼたぼたと落ち、あっという間に頭も濡れそぼる。髪をかきあげ後ろに流して、オールバックのようにしながら進んだ。裏通りを行くあいだ、常に大きな雫が頭の上に垂れてきて、その感触が定期的に続くのが、雨のなかを行っているので当然なのだが何だか不思議なようで、まるで頭のすぐ上に見えない枝の先でもあって、そこから雫が絶えず供給されているかのようである。それでも自宅に近くなる頃には降りが弱まっていて、樹間の坂を下って自宅の見える道に出ると、もはや止んでいたので間が悪いなと思った。父親もちょうど帰ってきたところで、傘も差さずに玄関の前に歩いてきた。自転車をしまうとなかに入り、居間でネクタイを外してシャツやスラックスも脱ぎ、室に帰ると瞑想はせずにすぐに上に戻ってきた。それでカレーライスを大皿によそって食い、もう一杯おかわりもしたが、疲労のために次の行動に即座に移ることができず、『水族館ガール』というテレビドラマの最終回をちょっと眺めた。風呂に入ったのは一一時である。ふたたび頭を泡立て洗って、ねぐらに帰ると一〇分ほど瞑想をした。書き物をしなければいけなかったのだが、ちょっと休もうと寝転がってプルーストを読んでいたところが、いつの間にか意識を落としており(正確には自ら眠ってしまっても良いという気分で、本を閉じて大の字になったのだが)、覚めると零時半だった。身体が少々重かったが、コンピューターの前に移って打鍵しているうちに血流が正常に戻った。Mal Waldron Quinet『The Git Go - Live at the Village Vanguard』を掛け(この作品は売却である)、前日の記事を綴ったが、大して印象的なこともなかったので、全部で二四〇〇字である。一時過ぎに終えて、歯を磨いたのち、音楽を聞こうというわけで、例によってBill Evans Trio "All of You (take 1)" に聞き入った。もう一曲、Brad Mehldau『Live In Tokyo』も集中して聞くに値する作品なので、その冒頭( "Intro" は除いたが)、 "50 Ways To Leave Your Lover" も聞いて、この日の音楽は終いとし、そこから、前日も射精して大して性欲が満ちていないのにもかかわらず、ポルノを閲覧しはじめてまたもや射精をした。すると既に二時半を回っていた。そうして三時前から三〇分ほど読書をすると、瞑想もせずに眠りに向かった。