アイロン掛けを終えるとソファに就いて、外を眺めてみれば、前日よりは雲の薄い空で、一面を埋め尽くすほどの量はなく、頻繁に綻んで清涼な小川めいた青さが覗いている。
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坂を上って行くと、空気はもはや冬にかなり接近した冷たさで、上着を着ていても肌が寒い。空の薄雲は渡って行ってしまったのか、いまはむしろ晴れているようで、宵前の青味が明らかであり、登場の早い星も明るく白光を点じていた。
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職場を出て裏通りのほうに顔を向ければ、真円の少々崩れてもまだ大きな月が、東空に皓々と浮かんでいる。夜道を行くあいだ見上げた空は、雲は変わらず消えているようで、月の光が遮られずに渡って、色味が露わである。空気は冷たく、風が流れるのが耳朶に引っ掛かって、芯の抜けてはいるがそれでも低く重々しいような響きを穴のほうに送って来て、帰り着く頃には耳が痛むほどだった。