2016/11/25, Fri.

 三時半を前にしてようやく眠る気になった。しかし、消灯して横たわってみれば、夜更かしのためだろう、不安が身中にわだかまるようで、胸に触れる腕を伝って身体中に響くおのれの鼓動が、気になる。それが聞こえていると、どうしても心臓に意識が行ってしまい、すると今度は心臓が、周囲から圧迫されるように苦しくなる。心臓神経症の全盛時には、たびたび寝床で不安と不眠をもたらした、馴染みのある感覚である。よく知ったものだからと、姿勢を変えながら、やり過ごして寝付くつもりが、頭が無闇に冴えていて、どうも眠気の寄り付く余地がない。横を向いて心臓の音が大きくなれば、次の瞬間には鼓動が止まるのではないか、あるいは臓器が破裂するのではないかと、過去にはよく経験した幻想がまたもや戻ってきて、そんなことはないと既に経験で知っている冷静なおのれがその不安を後ろから眺めていても、やはり苦しさはある。それでこういう時には、睡眠薬代わりに精神安定剤を飲んで、さっさと寝付くのが一番であると、慣れたものでぐずぐず闘わずにさっさと立ちあがって明かりを点け、ロラゼパムを一錠、口に含んだ。そうして寝床に戻り、舌と口腔のあいだに挟んでちょっと溶かしたあと、飲みこんた。仰向いていれば、心臓も身体に響かず、意識がそちらに向くこともなくなって、じきに眠りの前兆である意識の混沌が訪れて、うまく寝入ることができたらしい。