2017/1/17, Tue.

 晴天。道路に放り撒かれた打ち水のようにして、炬燵テーブルの天板上に、液体じみた光が撒き散らされており、びしゃり、という音すら聞こえてくるような輝かしさで、食事を取る合間に目を向けるとひどく眩しい。窓の外でも、そこここが光っている――川向こうの町並みの前を縁取るようにして並んだ木々の、茂みのなかに宝石めいて煌めきがいくつか埋まり、光の溜まるあまりに水面と化したような屋根が見られ、電線の頂点にも小さく白明かりが点って、町の姿が全体として揺らぎを帯びている。

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 前日と同じような青い黄昏時、街道に出て振り向くとやはり山際から和紙のようなあえかな乳白の残光が洩れて、青味の浸食に抗している。寒さは一日前よりは収まったようで、耳が痛くなることはなかった。

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 前日とは違って、帰路のほうが寒く感じられた。月はもうだいぶ移動したらしく、午後一〇時前では、見える範囲にはなく、裏通りから表に出るところで見上げると、黒々と闇が籠りながらもしかし透き通って表面的な空の正面に、オリオン座が斜めに掛かっている。坂道まで来てひらいた空間に臨めば、市街の上に雲が湧いて、端々を持ちあがる炎のそれと同じく不定形に崩しながら広がっているが、下端は水平線には達せず、その手前でまっすぐ横に切れて、明かりの散らばった建築群とのあいだに群青を溜めていた。

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 読書をして、丑三つの頃合いに到り、眠ろうと明かりを落として布団に潜り、しばらく眼裏の闇に沈んでからふと瞼をひらくと、暗がりに慣れた瞳の捉えたカーテンが薄明るんでいて、幕を透かして朝顔の萎びた蔓の影が映りこんでさえいるのに驚きめくれば、帰路には見えなかった月が遅れて登って、夜空に掘られた穴に半ば埋まったような相貌で、白々とした顔を出していた。