2017/2/4, Sat.

 料理の途中、洗い物をしていた時だったと思うが、玄関の方から父親が母親のことを呼んだ。呼んでいると、その声を仲介して、居間の卓に就いていた母親に知らせてやると、続けて父親は、ごみ袋はあるかとか何とか訊いて、出ていった母親と話していたのだが、その言葉の輪郭が、身体を動かして――何をやっていたのか正確には知らないが、いつものように畑仕事や、また家の付近のがらくた類の片付けでもしていたのではないか――疲れていたとすればそれもあってか、何となく歳の行った人の、口のなかや周囲の肉が回りきらなくなった発語の撓みを覚えさせて、そう認識すると先ほどの、最初の呼び声も何だか弱々しく響いていたような気もしてきて、姿を見ずとも、背後から届くその声でもってと、こういう形で父親の老いの断片を知らされることになるのが、一つの小さな驚きのようでもあった。