2017/2/15, Wed.

 ベランダへ続く戸口をひらいて境に立つと、肌に乗る陽射しに「照り」の感触があって、春めいている。しかし外に出て、流れる大気のなかに入ると、やはりまだ幾許かの冷たさが身に触れて、陽光の春色が中和される。洗濯物を取りこんだあと、しばらく柵の際に立ってあたりを眺めた。何という鳥のものなのか知らないが、機関銃の掃射のような――などと表現するには可愛らしさの勝り、あまりにささやかな音色なのだが――短音が間断なく連続する鳴き声が空間を埋めている。隣家の敷地の梅の木は、その枝振りが丸みを帯びて籠のようになったなかに珊瑚色めいた淡紅を点けて装っている。すぐ正面、畑の斜面に見下ろせる自家の梅は先日伐採されてしまったが、伐られた太い枝の脇から薄緑がかった細枝がすらりと生え伸びて、穏やかな白梅を点々と灯しているのが、さながら簪であった。鳥が飛び立って、隣家の端の柵の上に乗り、その場で方向転換を繰り返す際に尾の橙色が覗くのを見れば、どうやら尉鶲らしい。その動きを追いながらも、同時に隣家の梅の木にも飛んでいったもう一匹の方も見やるのに、視線が忙しい。尉鶲は近くの諸所に飛び移っていたのだが、じきに遠くの方へと渡って行って見えなくなった。そのあとから、鵯の激しげな鳴き叫びが立った。

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 往路、坂の出口付近で、市街地の上に乗った空に、雲と建造物とに挟まれて、薔薇色と夕青色の精妙に混ざった池が作られているのが見える。雲は横に断続的に伸びて山のほうまで掛かり、位置によって複雑に、それらの甘やかなような色に浸されている。

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 裏通りの途中、空き地を過ぎざまに、雀たちが貧相な草の生えた地面に集まって、一心不乱といった様子で目の前をつついているのを見かける。下向かせているために顔はうまく見えず、高くより見下ろす視点から主に映るのは褐色の背のみで、樹皮めいた質感を覚えさせもする。そのように丸まって、そそくさと細かく動きながら集っているのを見ると、鳥というよりは甲虫めいて見える瞬間もあった。

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 帰路、月はもうだいぶ低くなって、家々の合間を進んでいるあいだは姿が見えない。市街を見晴らす坂の上に来た時にようやく、火照ったように赤味を帯びているのが、東南の方角に現れた。