2017/2/16, Thu.

 往路、鼻先を擦る空気の感触からすると、気温は高めらしく、そのためか知れないが、坂を上って行くあいだ、周囲から鳥の囀りが降り続けていた。身にほとんど冷たさが触れないのに、春の近づきが思われて、肌に摩擦をもたらさず体温に溶けこむあの軽い空気の夕べが早くやって来ないかと、恋しさに二、三か月後の季節を気早に先取りして胸を疼かせる晩冬である。前日に青紫の池を見かけた坂の上まで行くと、この日の東南の空は一日前よりも淡く、雲に遮られることなく、上方の薄水色から純白を挟んで町並みの際の淡紫まで一繋がりに滑らかな推移を見せている――のちに裏道を行く途中では、見上げる空の青のその淡さが、さながら半透明のセロファンを貼りつけているようにも映った。街道まで出ると、西の山際にいくらかの雲が乗ってオレンジの色を小さく添えて、既に姿を隠した太陽の色を媒介して提示しているのが背後に見えた。裏通りのなかでも、広めの空き地まで来て空がひらくとふたたびそのさまが見えて、朱の色を受け止めながら差しこまれた稀薄な雲のそれぞれによって、夕青の円熟を進めた空が一部切り取られたようになっているのが、むしろ焼けた白さのほうが、湿り気を帯びて滑らかに青く浸った雲の広がりのなかに僅かに救われひらいた空の穴として、反転的に映る瞬間もあった。