往路は早めの、午後三時半過ぎである。市内では一年に一度の大きな催しである祭りの、二日続くその一日目で、二日目が本番でこの日はまだ規模も小さいが、坂を上って行くあいだも祭り囃子の音が、終始途切れずに、乾いて晴れた空気に乗って届いた。陽射しはほとんど夏に近いような厚みを持っており、ベストをつけた上にジャケットも羽織っていては明確に暑く、身の周りの空気が粘って重くなっているような感じがする。街道を行くと、公園の前に山車が一つ出て、二車線の道路の片側に停まっており、舞台上で囃子が奏でられ、周囲には法被姿の男らが集っていて、警官も棒を振って交通整理をするなか、皆で方向を転換させようと気張っているところだった。見上げながらその横を過ぎて、表をそのまま行けばほかの地区の山車も見られるだろうが、賑やかさのなかに混じるのがそれほど得意な性分でもなし、裏通りに入って、距離を置いてやや希薄化した音楽の鳴りを聞きながら歩いた。風は吹くというよりは撫でるような具合で、熱を大して散らしもしない。この道行きでは結局、四つの山車を見かけ、あるいは近くに遭遇した。