2017/5/24, Wed.

 夜更かしのために正午前まで長寝に浸かってから起きると、窓はのっぺりと薄白く、明るさの弱い寝床だった。未明までモニターに瞳を晒していたのが祟ったか、首の固くて、布団を離れてからあまり間も置かず、頭痛が始まった。
 歯を磨き口を濯いで室に戻って来ると、雨粒の葉に弾ける軽い音が、外から立っている。窓に就くと、響きのだんだんに集まって寄せてくる気配が僅か感知されたが、玄関を抜ければ散るものは微かで、傘を持つほどではなかった。坂に沿った木の間ではこの日も木を伐っていて、地に積み重なった枝々にチェーンソーを当てて唸らせているその手もとから、薄青い煙が湧いて漂う。風はわりあいにあり、ここのところのしどけないまでにほぐれたそれでなくてなかに小さく芯の窺えるような、比較的締まったような涼しさを持っていた。それが止まると、蒸し暑さが少々、やはり身にまつわってくる。道中、寺の枝垂れ桜に向けて、久しぶりに目を送った。五月青葉の満々とした濃さは周辺の木々も遜色ないが、この桜は枝が下っているから、梢に曲がり目が露出して、仄紫の色をちょっと被せて添えられているのが、ほかになく興だった。のろのろと歩いているあいだにも頭痛は溶け切らず、後頭部の右方に留まってこごる。
 乗る駅の周りでは燕が、頭の脇を通って飛び交い、降りたホームでも駅舎の周りを、風の象徴めいて滑らかに駆け回るのが見られる。図書館は席が埋まっており、読書をしながら待っても空かないので、向かいのビルの喫茶店に入って文を綴った。他人の文も写して宵にもいくらか入りこんでから出ると、歩廊の上を行く足が、長時間据えられた腰をほぐすように、膝から下をすっと緩く押し出すようになっている。電車が入線してくるのが見えたが走る気にならず、発ったあとのホームでベンチに就いて本をひらくと、風が地に近くを這ってくる涼しさが、顔の窪みや裾から出た腕にやや強いようだった。