柚子の木の枝を、剪定というほど大袈裟なものでないが、いくらか刈り揃えるために外に出た午前、空気は暑い。空は雲が厚めに広がって白いものの、頭上には間が生まれているようで、降り注ぐものもまたあり、結構な熱が身についてくるのに、太陽はどこかとまだ高みにあるのを求めて首を曲げて行ったが、まばゆさの圧が強すぎて、光源の端に視線を引っ掛けるまでにも、とても到らない。正午前、道に出ても、蔭と日なたの境が薄くあり、空気は温もっていた。しかし風も、小川の流れのようにするすると、涼しく吹いて、募れば涼気が一線を超え、まさしく川面に手を浸しているかのように爽やかな冷たさに転じることもある。大気は搔き回されて、涼と暖のそれぞれが混濁しながら身に触れてきた。
午後から立川の喫茶店に友人と集まり、五時を過ぎて出た時にも、風は変わらず大きく吹いており、目の前を行く女性の、長いスカートの裾がふるふると動く。書店をうろついて、カルミネ・アバーテ/栗原俊秀訳『偉大なる時のモザイク』を買ったあと、ラーメン屋に寄ってから街を出た。最寄りを降りて入った坂の端に、色褪せた竹の葉が散り積もって、湿り気をまだ残しているようで、下りの出口の脇では前夜の雨の名残りか、側溝のひとところに寄せ集められて膨らんでいた。夜に到って風は弱く、緩く流れるようになって、そのなかに雨の子が僅か散って含まれていたようだが、すぐに触れなくなった。