2017/6/27, Tue.

 靴を履いて玄関を出る間際に、密閉された車に長く乗って酔った時のような疲労感が、鼻筋から眉間のあたりをかすかに通った。気付けば身体も、微熱ほどですらないが熱を持っており、四肢の先に頼りないようなぶれを感じる。その肉体を外の空間に慣らすようにして、病み上がりのような緩慢さでとろとろ歩いて行ったが、僅か流れる風も涼しいでもなく、停滞気味の空気だった。それでも脚を動かすうちに、血がよく巡るようになったのか、身体はこなれて、自らの輪郭に落着いて、いくらか楽な風になった。
 出掛けの薄い愁訴のわりに、長めの勤務が事なく済んで、終えれば身体は軽く、気力が残っているらしい。道に掛かる光のなかが煙いようで、水気の匂いも鼻に寄るのに、どうも雨が降ったのではと見れば、確かに路地の両脇に、濡れた名残りが薄くある。室内にいたあいだ一度、雨音らしきものを聞いた覚えもうっすらあったが、それをさして気にせずすぐに忘れて、また水溜まりも作られず、道の真ん中は既に平常の色に乾いているところでは、短く去った雨だったのだろう。それにしては空気に霧がかったようなところが残り、湿り気の匂いも定かだが、雨後の涼しさはなく、風も通らず、かと言って暑いほどでもなく、半端な夜気だった。
 帰って飯を平らげたところ、しかしすぐに椅子から立ち上がれず字義通りに腰が重いのに、体力の残っていたつもりがやはり疲れはあると見えた。湯を済ませて戻った部屋に入る外気の、深夜に到っても冷やりともせず過ごしやすい代わりに、睡気が混ざりがちの濁った読書となった。