2017/7/3, Mon.

 布団の下で、肌に汗を溜めて寝覚めた朝だった。東京でも三五度に迫る猛暑で、雲はあって晴れきるでないが、眠りの少ない身体が暑気に頼りない。一一時を迎えて出た道に風はあり、坂の落葉は乾いて茶色く左右に積まれ、そのなかを駅まで行ってベンチに座ると、西行の和歌を読みながら電車を待った。屋根の下にあっても光が照って明るさに囲まれれば、熱気が日蔭のなかまで身を包むように迫って頭に上り、熱中症を思いもするが、折々に風が波打って寄せ、熱を散らす助けとなり、外では線路の周りに立った雑草が水底の海藻のように揺らいでいた。
 図書館で文を綴り、軽食を取りに出た午後、気温の調った屋内から一歩出た途端に、熱が群がって身の周りをぴったりと固めるのに、夏の空気とはこういうものだったなと思い出した。とは言え、おにぎりを買って座ったベンチの、風は弱く揺らぐ樹の蔭はこちらを逸れているが、陽は空に止まっており、三時まで来てさすがに盛りも過ぎて、さして暑いわけでない。周りで遊ぶ鳩のなかに、恋人同士のように連れ立った二匹がいて、熱情的な接吻を押し付けるように相手の顔周りを繕う片方に、もう片方は成されるがままになっていた。
 五時に到って館を去ると、先ほどの軽食時よりもよほど暑く感じられ、ホームに立っても頼りなげな身体に、高まっているわけでもないのに心臓の鼓動が煩わしく響く。眠りの少なさと猛暑とで既に疲れはじめていたようで、勤めを済ませた夜には身体が大層重く、頭痛が始まっていた。甚だしい疲労感に、慣れた夜道が長い。月は雲を煙らせるのみ、風があっても涼しさというものを忘れてしまったような夏夜で、じきに襟足が濡れるほどに汗が浮かんだ。帰って服を脱ぐと床に転がり、文庫本を手に休んでから、食事を取って風呂に疲れを溶かしたあとの夜半過ぎ、頭痛は収まったが、ふたたび本を持った手の先が、不健康に痺れていた。