2017/7/25, Tue.

 朝陽のなくて、白い窓の目覚めだった。食事を済ませて出た頃には、坂から見下ろした川の樹々が淡光を掛けられて緑色が薄らんでいる。曇り空の足もとに陽の色は弱く、影はかすかだが、それでも眠りの足りない目に眩しさの刺激がやはりあって、道の先を見通すには人相悪く目を細めなければならない。葉書をポストに入れると、たまにはとそのまま表の通りを、最初は顔を俯け目を伏せ気味に行ったが、丁字路の角にまぶされたような白の百日紅を過ぎてまもなく、雲を通ってくる光の圧力が弱まって瞳に掛かる重さがなくなり、脚もほぐれて血が回ってきたのか、身体も軽くなったようだった。見上げると、艶のない白のなかに一層白く、太陽の影が小さくぽっかりと印されて、しかし目に沁みるものもない。くすんだ大気の色合いに、雨の気配を覚えないでもなかった。
 午後になって帰りは前日と同様電車に乗って、扉に寄って外を見ていると発車間際から雨が始まった。夏の雨らしく降りはじめから間を置かず一気に駆けて募り、最寄りに降りると既に大降りとなっていて、水色のシャツが即座に濡れてさらに青くなる。結構な勢いだったが走る気にはならず、大粒を打ちつけられながら澄ました顔で平静ぶって横断歩道を渡り、坂を下るあいだは樹々がいくらか雨除けになったが、ふたたび通りに出ると髪が水を吸収しきれなくなり、顔にだらだらと垂れてくるものを無益に手で拭いながら、やはりあくまで走らずに足を運んだ。着くと玄関先で靴よりも先に服を脱いでしまい、胸を晒すとすぐにベランダの洗濯物を引きこんだ。
 その後は蒸し暑く、室内の熱気は前日以上とも思われて、夜になっても裸で何の支障もなく、むしろそこに扇風機がなければ暑気が籠るくらいで、風を止めても過ごしやすくなったのは、ようやく深夜に到った頃だった。