2017/8/10, Thu.

 覚めた時から雨降りの、仄暗い朝だった。早朝から既に、窓の外は石灰水の色を満たされて霞んでいる。盛るでなく、軽く落ちて斜めに流れる雨粒に、道を行きながらスラックスを濡らされた。終盤では足先も少々湿り、雨は風を受けてほとんど水平に流れるような具合だった。百日紅は最盛期だろうか、紅色の花房が豊穣に、塀の外まで重たるそうに膨らんでいた。
 雨のなくなった帰路には森の方から、搔き混ぜるような蟬の音が白霧めいて湧き出して、道に沿って離れず続く。腹は空で、食べ物を欲する胃の臭いが喉元に立ち昇ってくるようだが、足を急がせず、傘をつきながら抑え気味の歩みで帰った。雨後の坂には鳥が盛んに飛び渡っており、その下を抜けて遠目に現れた川を見下ろすと、絵筆をいくつも洗ったあとのような濁った緑色で、その川面からは靄が湧き、乳白色に濁った空気が空から山まで全面に覆っていた。