2017/10/23, Mon.

 台風の通って荒れた夜を遅くまで更かし、夜明けも間近に寝床に入って昼まで眠りこけてから覚めると、空はまさしく台風一過の晴天で、網戸に走った光の筋の目に引っ掛かってそこに留まり、窓ガラス一面に汚れも露わなその上に、朝顔の蔓の影が淡い映し絵となって浮かんでいる。床に横たわったまま見上げていると、窓枠を越えてじわじわと雲が現れ入ってきた。上空に風は残っているようで結構素早い動きで滑り、全体として南に流されながら部分部分で流動的に、細かく蠢き形を変じて、肌理の細かく水っぽいような白さの雲だった。
 もうだいぶ日が短くなったもので、五時に出れば空はすっきりしていても、晴天の陽の残滓ももはや道にない。坂から遠くに見下ろす川は烈しい雨に増水しており、土気混じりの枯葉色といった風情に生気なく濁った緑の水が、岸を呑みこんで広くなっていた。太陽は既に山の向こう、街道を越えて路地に入った角から仰ぐ西空の、残光に澄んだ純白の下の山際にちょっと朱色の残っていて、白さの届かぬ上の方にはこれも今から落ちていく月が、爪の破片を貼りつけたような細さで傾いていた。そちらを時折り見返りながら進む通りに、台風の名残りか風が走って、庭木が頭を振り乱し、上着を羽織らなかった身体に涼しさが強い。薄暗くなってからまた見返ると、青さが低い空まで浸透し、純白は押しやられて乏しくなったが、山際の朱色のかえって先より濃く明るんだようで、稜線を伝って南の方までうっすらと波及しているのが家々の合間に覗いて見えた。
 朝から暮れまでまっさらに晴れた空のしかし長くは続かず、夜に見上げれば、もう斑雲が生まれて幅を利かせている。行きよりも冷たい空気に手の冷え冷えとする通りを抜けて街道に出ると、雲はさらに増えており、西から東までひと繋がりに長く敷かれた帯もあって、ぽつぽつと斑な穴になっているのはむしろ、夜空の藍色の方だった。